自分も加担してる気がして…
“無料ツアー”の後ろめたい実態

 この手のツアーの主催者はパン屋さんや温泉施設など、一般の商店の顧客に抽選券を配る。そうして当選と称して買い物ツアーのタダ券を配るのである。

 渡す相手は女性の1人客。1人参加は心細いと亭主や家族、友人などを連れてくればバカ高いツアー代金を取る。だいたい40人が参加すると10人ほどは金銭を払って参加する。

 以前、この手のツアーで、どこかの店舗で宝石に興味のない人に押し売りみたいな強引なことをしたことがあったようである。それで今は売るほうとしてもソフトな応対をしているようだ。

 宝石の売上、実費でツアーに参加した人の代金、そして土産物店からの手数料。それらで経営はウハウハなのであろう。私がこの手のツアーの添乗員をしていた頃には、けっこうツアーの数も多かったものだ。

 だが、その買い物ツアーをバンバンこなしたかというと、それがそうでもないのだ。

 まず普通の旅行会社が販売するツアーが、自粛ムードが解き放たれて、じょじょに復活してきたのだ。そうなれば、もとのツアーに戻りたくなるのが人情というものだよ。

 それに宝石店がうさんくさいといったらない。宝石に関心を持つ人を狙い撃ちにして集中攻撃するのはあくどい。しかも参加者が逃げられないようにバスを隠すというのは悪賢いやり方だ。

 さらに売っている宝石が、どうにもいかがわしい気がしてならない。そんなこんなで、こちらまで悪事に加わっているような気がしてしまう。それで、すっぱり、手を引きましたよ。

 そのツアーの添乗をしていた時には、もちろん自宅から行くのは無理。だいたい1週間から2週間ほど各地のビジネスホテルを泊まり歩きましたね。

 今でも時々、土産物店でその手のバスツアーを見かけることがある。あの時に感じた怪しい気分は、もう二度とごめんだよ。