エーッ、そしてガーンである。多少の霧なんか気にしないで地面に降りてくれよ。
普段なら、そのようなことがあっても、どうということもないのだ。だが私は次の日に長野から九州に行くツアーの仕事が入っているのだ。
添乗員というのは、そう簡単に代わりは見つからない。何しろ私はそのツアーのために、この小豆島へのツアーの前に2時間も準備をしていたのだ。
そういう準備作業もなしに、いきなり添乗をしろと言われても無理というものだ。しかし、現実的な問題として私は明日は長野出発はダメなのである。神戸に戻ったら、とりあえず派遣会社に連絡を入れなくては。
再び神戸空港に戻る。飛行機から降り立った私は、まず現在のツアーの旅行会社に話して霧のために神戸に戻ったことを伝えた。続いて派遣会社に連絡して明日のツアーには出られないことを告げた。
まず今のツアーは参加者に1時間の猶予をもらう。その間に参加者には空港のレストランで夕食を摂るなどしてもらう。その時間を利用して私は、まずは明日の飛行機の搭乗券を手に入れなければならないのだ。
添乗員が明かす宿泊費の裏
旅行業界のもうけのからくり
空港のカウンターで列に並んでいる間、今のツアーの旅行会社と派遣会社から交互に連絡が入り、えらい忙しい思いをした。
とくに明日のツアーは、まず今から添乗員を探すこと、その添乗員がツアーの準備をどうするかなど問題が多すぎる。
そもそも派遣会社に問題ありなのは、仕事のスケジュールがきつすぎて、何かあった時に、こういうトラブルになってしまうということだ。私のほうからそんなことを言っても仕方がないのであるが。
しばらくして派遣会社から吉報が入る。ようやく明日の添乗員が見つかったとのこと。
その人は以前に明日のツアーと同じツアーに添乗の経験があるそうだ。だから何とかなるであろうとのこと。私もとにかくホッとした。
やがて今の旅行会社からも電話があった。今日のホテルがようやく見つかったとのことである。
ただ、そこで驚愕したのは参加者に提示する宿泊料金である。旅行会社はホテルから安い価格で部屋を仕入れた。
それを参加者に少しずつ金額を上乗せして集める料金を設定している。こんな場合にもお金儲けするのかよ、と思ってしまった。
その上乗せ料金を集めるのは、もちろん添乗員である。何も知らない人たちからお金を集めるのは、なかなかに気が引けましたとも。
ただし参加者は料金に、とくに不満な様子は見せなかった。宿泊したホテルは駅前の高級そうなところ。そこにそこそこの値段で泊まったのだから、料金の裏側など知るよしもないのだ。