管理職ができない人が
管理職をしている

多くの会社では、管理職が必要となった場合に、内部から昇格するか、外部から採用するかのどちらかの手段をとる。このどちらの場合であったとしても、「管理職としてどのような能力があればいいのか」「候補者はその能力を持ち合わせているか」といった観点から候補者を決めていくわけだが、まず前者の「管理職として必要な能力」をきちんと定義している会社は極めて少ない。
何か条件が決まっていたとしても、経験したことがあるかどうかなどが重視される傾向にある。つまり、管理職としての能力を持っているかではなく、経験があるかどうかで決めてしまいがちなのだ。
また、大企業であれば、年次などで決まってしまうことも少なくないだろう。その結果、多くの会社が管理職として必要な能力を持っていない人を管理職にしてしまっているケースが頻発している。
言い換えれば、管理職ができない人が管理職をしているのだ。うまくいくはずもない。
管理職にふさわしくない人を採用した、もしくは抜擢したということは、管理職がいまいち成果を出せない要因の1つは会社側の問題といえる。
次に2つ目。「知識や経験の不足」である。
1つ目の能力不足と混同しがちだが、実は違う。例えば、生まれて初めて管理職に就いた場合や、管理職の経験があったとしても組織規模が違う場合などは、管理職としてやるべきことが頭に入っていなかったり、経験が不足しているが故、思いつく打ち手の数が少なかったりといったケースが存在する。
言い換えれば、引き出しが少ない状態だ。このようなケースでは、会社はこの管理職に対して知識や経験を得られるような投資をしていかなければならない。
研修はその一つではあるが、一度何らかの研修を受ければ済む、という話ではない。例えばマネジメントや組織運営理論には複数の理論があるが、おそらくその理論をしっかりと整理して学んでいる管理職は多くないだろう。
それ以外にも、日々現場で起きるケースに合わせた考え方や動き方を指南してくれるメンターのような人が本当は必要なのだろうが、そういったメンタリングを管理職向けに常時行っている会社はあまり聞かない。
日本の多くの会社では、管理職としての知識やノウハウなどは、自分が部下時代に上司にされたものの受け売りとなってしまったり、見様見まねで行うものになったりしている。