凍結後の対応は「預金払戻し制度」を活用
無知 でも、家族の死を見越して必要なお金を引き出しておくのって、けっこう難しそうじゃないですか? 突然、夫が亡くなって、妻がお金が必要なのに口座が凍結されてしまったら、どうしようもないですよね。
前田 そのときは「相続預金の払戻し制度」の利用を検討してください。これは国が民法を改正して2019年7月に導入した制度ですが、少し手続きがめんどうとはいえ、凍結された口座から一定額のお金を下ろすことができます。
国税 一定額というと、具体的にどれくらいですか?
前田 預金払戻し制度には「家庭裁判所の判断が必要な方法」と「判断がいらない方法」の2つがありますが、使いやすいのは後者です。後者の方法を使うと、「相続開始時の預金の3分の1」に「法定相続分」を掛けた金額を下ろせます。
たとえばA銀行に預金900万円が残っていて、引き出す人の法定相続分が3分の1なら、「900万円×1/3×1/3=100万円」を引き出せます。ただし、同一の銀行から引き出せる上限額は150万円に定められています。
無知 なんとなくですが、150万円あれば当面は何とかなりそうですね。手続きは難しいですか?
前田 そこまで大変な手続きではありません。除籍謄本、戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本(相続情報一覧図でも可)、そして払い戻しをする本人の「印鑑証明書」が必要です。これらをそろえて銀行の窓口に行けば手続きできます。
払い戻し後の「使い道と記録」が重要
国税 相続預金の払戻し制度を使ったあとの注意点はありますか?
前田 はい。払い戻しを受けたお金は葬儀代などの本当に必要なことに使い、何に使ったのかきちんと記録をのこしておくべきです。遺産分割協議の結果次第では、払い戻した預金がほかの相続人の財産になることもありますから、あくまで仮払いのものと考え、慎重に利用するようにしましょう。
金融機関の口座が突然凍結されたらどうする? …「相続預金の払戻し制度」の利用を検討
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。