カジノにF1、人手不足も…問題は山積み!
では万博、そしてカジノIRが、大阪の都市開発が進むきっかけとなるのか。そう簡単ではない三つの懸念点がある。
まず、一つ目は場所の問題だ。夢洲は市内との距離が遠い。東京の感覚で言えば、夢洲はお台場ではなく、舞浜(東京ディズニーリゾートがある街、千葉県)くらいの心理的距離感である。しかも海上島で孤立しており、周囲に商業施設やオフィスビルがどんどん建設されるとは考えにくい。
海外で都市型カジノIRが成功している場所は、ダウンタウンとの距離が近い。たとえマカオのコタイエリアのように離れている場合でも、複数のカジノが集積している。韓国の仁川にも最近、パラダイスシティ(韓パラダイスグループと日本のセガサミー共同開発)に加えて、インスパイア(米モヒガン社が投資)というカジノIRがオープンした。
二つ目は、万博跡地にサーキット建設を予定していることだ。大阪観光局はフォーミュラレース(F1)を誘致したいと旗を振っている。夢洲をエンタメの集積地にしたい狙いが透けて見える。
しかし、各国のF1はレース単体では採算を取るのが難しく、公的資金の負担によって開催されている。維新の会が地元で支持されているのは、行政の資産を売却し、財政再建を進めるというポーズを取ってきたからだ。もし、F1に市税を投入すれば支持層の離反を招くだろう。
これを回避するため、F1運営費用をカジノIR事業者が負担するように動くだろうが、そうなると今度はカジノIRの採算性が大きく下がり、共倒れに終わる可能性は高い。他方、F1主催団体が、大阪とてんびんにかけるために鈴鹿(既存のF1開催地、三重県)に対して開催権の値段をつり上げる事態につながれば、モータースポーツファンの批判は大阪に向くはずだ。
三つ目は人手不足だ。万博に頼らずとも大阪のインバウンドは好調で、ホテルの客室数はこの10年で2倍に増え、客室稼働率は東京を上回る月もある。阪急梅田本店の売上高は過去最高の約3600億円に達した(24年)。こうした好調の裏で人手不足が問題視されており、カジノIRができると、大阪サービス業の人手不足がより深刻化し、好調なホテルや飲食、小売業の足を引っ張りかねない。テナント
このままでは万博は、大阪の都市開発を進めるきっかけにならない可能性がある。吉村知事は、万博の成否について「将来的に分かること」と述べている。それはそのとおりなのだが、勝負を賭けるにしては、あまりに賭け金が大きかったのではないだろうか。
※写真は1970年大阪万博


