2カ月の研修中、本業の仕事はしない

――研修の間、本業は一切やらないのですか?

太古さん:ほぼやりません。ですから、この取り組みは工場の皆さんの理解と協力が不可欠なんです。また、こうした背景もあって、業務時間外も積極的に自習する方が多いです。「家でもやりたい」と初めてパソコンを買ったメンバーもいました。

各々の業務課題と向き合い、開発に集中する京都(大山崎)工場の皆さん各々の業務課題と向き合い、開発に集中する京都(大山崎)工場の皆さん 写真提供:太古さん

外注で数百万円かかる物体検知システムを5万円で自作、自動運転の無人運搬車も

――エース級の人材を2カ月間も送り出すのは、上司としても覚悟が要りますよね。

太古さん:相当な覚悟が要ります。この取り組みは、京都(大山崎)工場からスタートしたのですが、工場長が「パソコンが普及したときと同じように、AIもいずれ当たり前になる。それを工場の現場からできたら面白いよね」と言ってくれて、「やろう」と後押ししてくれたんです。このトップの意思決定があったからこそ、うまくいったと思います。

 組立課の宇田剛さんは、研修でAIやプログラミングを学び、自ら物体検知システムを作りました。外注したら数百万円はかかるシステムですが、自分でプログラミングして部品を集めて作ったので、5万円です。今では自動運転のAGV(無人運搬車)まで自作するようになりました。

 同じく組立課の西川翼さんは、そんな宇田さんを見て「自分も現場の負担を減らす取り組みがしたい」と、プログラミング未経験から研修を受け、ウレタン製造の異常検知システムを自作しました。今では3Dプリンターまで使いこなして改善を続けています。