「羽生結弦」からヒント→ヒット企画が誕生!

給料遅配→社員に借金のドン底から「日本一売れてる月刊誌」が生まれた驚きのワケ持続可能なメディア』 (朝日新聞出版)   下山進 著

 会社では以前から一般のシニア女性を毎回違う顔ぶれで呼んで、新聞広告の案についての感想を聞くという「座談会」というのが行われていた。

 しかし、ここに編集部門からは誰も出席していないのだった。出席しているのは主催しているマーケティング部の人間だけ。

 山岡は、編集部員に「行ってみない?」と誘ってみたが、 「ああいうのは、行っても意味がない」と冷淡だった。そのかわり編集部では、有識者に雑誌を読ませて感想を聞く“有識者会議”なるものを開いているのだということだった。前編集長は、マーケティング部の介入をいやがっていた。

 山岡は「座談会」の方に編集部門からは1人出てみて、これは企画の宝庫だと感じた。参加しているのは、ハルメクをまだ購読していない潜在読者の50歳以上の女性だ。

 毎回違うメンバーがアウトソースしている会社から選ばれてくる。定期購読誌というのは書店売りをしていない。つまり実物を読者がみて買うというものではない。新聞広告がすべてだ。その新聞広告をA案、B案と見せていくのだが、当然その中でどういう企画なのかということを説明する。そうすると、さまざまな反応がある。そこをつかまえて企画のヒントにできる。

 また、ハルメクは物販の他にコミュニティ部門というのがあり、旅行なども企画販売している。そこで伊豆の河津桜を見る旅というのがあったので、参加をしてみた。特別列車に乗って河津桜を見ながらお弁当を食べる。

 このときシニアの女性の間で話題になっていたのは羽生結弦の試合の結果だった。「どうなったのかな」。スマホを持っているのに、それをなんで調べないのか不思議だったが、ちょっと話をしてみて理解した。そもそもスマホの使い方がよくわかっていないのだった。「スマホの使い方」はハルメクの定番のヒット企画となって定着する。