研究データを統合して解析した結果、日常的にデジタル機器を使用している人では認知機能低下のリスクが58%低く(オッズ比0.42、95%信頼区間0.35〜0.52)、認知機能低下のペースが26%緩やかなことが明らかになった(同0.74、0.66〜0.84)。

 研究グループによると、過去の研究では、認知症のリスクは、血圧を低下させることで13%、日常的な身体活動で35%、高い教育レベルで47〜62%、脳トレのゲームなど脳に刺激を与える余暇活動で31%低下する可能性のあることが示唆されているという。

 Benge氏らは、「一般的かつ自然な形でのデジタルテクノロジーの使用の結果として、『brain drain(デジタル機器を使い過ぎることで生じる脳の疲弊)』や『デジタル認知症』に至ることを示す、信頼できるエビデンスはなかった」と結論付けている。

デジタル機器が、思考力や問題解決スキルの
強化を促している可能性

 研究グループは、デジタルテクノロジーが認知機能の低下をより緩徐にする理由として、次の3点を挙げている。1)デジタル機器が、思考力や問題解決スキルの強化を促している可能性、2)デジタルテクノロジーが、認知症予防に役立つとされる社会的なつながりを強化する、3)加齢に伴い脳が衰え始めても、デジタル機器が「デジタルの足場」となって日常生活を支え、より長く自立した生活を送るための助けとなる可能性。

 ただし研究グループは、「高齢者の脳にとってテクノロジーが『常に良い』、あるいは『常に悪い』といった単純な答えは存在しない」と指摘。例えば、スクリーンタイムの増加とともに座位時間も増加すれば脳の健康に悪影響が及ぶ可能性や、ソーシャルメディアを通じて高齢者が誤った情報にさらされる可能性も考えられるとしている。

 また、今回の解析結果は、あくまでも成人期にコンピューターやインターネット、スマートフォンといったデジタル機器に初めて触れた「デジタル先駆者」の中高年層を対象とした研究から得られたものである。そのため研究グループは、「子どもの頃からデジタルテクノロジーに触れてきた世代にもこの結果が当てはまるかどうか、また今後、一般的なデジタルテクノロジーのあり方が変化しても同じ結果が得られるかどうかについては不明」としている。(HealthDay News 2025年4月15日)

https://www.healthday.com/health-news/senior-health/everyday-digital-tech-is-protecting-seniors-brain-health-study-says

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