しかし、筆者はすごく心配です。わずか4時限の教習でMTの操作ができるようになるとは思えません。MT取得者なら分かると思いますが、ATとMTの操作の違いって結構、難しいですよね。そもそもクルマの運転は、さまざまな操作が組み合わさって成り立つ行為。操作が増えるMTの教習を、たったプラス4時限でマスターするのは不可能でしょう。
指定自動車教習所の卒業者数は
ピーク時から約4割も減っている
さて、なぜ制度が変更になったのか、深掘りしていきましょう。ここから先は筆者の推測も含みますが、どうも教習所に入所する人をとにかく増やしたいという思惑があるように感じます。

指定自動車教習所は、公安委員会(つまり警察)が管轄しており、警察OB・OGの天下り先としても大切な存在です。しかし少子化によって免許を取り始める18歳人口は右肩下がりで、教習所の入所者数も減り、教習所の数自体も減っています。
警察庁の運転免許統計によると、2023年に指定自動車教習所を卒業した人は152万8207人でした。卒業者数のピークは1989年で261万2961人なので、約4割も減っています。
また、全国の教習所数(全日本指定自動車教習所協会連合会の教習所数)は 1236カ所(23年)で、ピーク時の1991年の1477カ所と比べて、241カ所(約16.3%)減少しています。
警察は高齢者講習なども教習所に委託することで教習所の役割を増やしていますが、何しろ少子化が進んでいるので、どうしようもないかもしれません。
また、物理的な問題も生じています。以前はMT車の種類があったので教習車のバリエーションも多かったのですが、現在はMT車が減り、教習専用車としては主にトヨタ自動車のカローラベースや、マツダのマツダ2セダンベースが残るだけ。教習所の車両調達負担もありますし、近い将来にMT免許取得自体が難しくなるかもしれません。