「サプライズで楽屋に入ってきて、そのまま撮影が始まる」なんて演出にも近い勢いだったので、なんだなんだと警戒しながら扉を開けると、そこには劇団ひとりさんが立っていた。

 あれ、ひとりさんだ。でもなんでだ……?

「やっと会えたよ、塚本ぉ!オレはおまえと話したかったんだよぉ!!」「なんの話かわかるかぁ!?」と、ひとりさん。

 え、マジでわかんないんだけど……なんかしちゃったっけ……?

「ミシンだよ、ミシン!オレもミシン始めたんだよ!」

 うわ、マジすか!

 それからひとりさんは、楽屋打ち合わせに来たディレクターさんが割って入れないテンションで「これ見てくれよ!このMA-1のワッペン!自分でつけたんだよ!」と言って、上着を見せてくれた。

 本当にキレイに縫われていて、僕も思わず「すごいキレイですね!」「素材的に縫いにくくなかったですか?」「この端っこのところも見事ですね!」と素直に言葉にすると、ひとりさんはよりいっそう笑顔になって「だぁから、塚本と話したかったんだよぉ!!」と言ってくれた。

 誰に話しても苦労が共有できないから、悔しかったらしい。

劇団ひとりが突然楽屋に「やっと会えたよ!」「なんの話かわかるかぁ?」異常なハイテンションのワケ『コントとミシン』(塚本直毅、光文社)

「イチからジーパンを作ってみたいんだよ!」「『ソーイング・ビー』観てるか!?」「いつか日本代表として、うちらで乗り込もうぜ!」と、その後もこれまでひとりさんと交わしたどの会話よりもアツい、濃い話をさせてもらった。

 ミシン様様である。

 その1時間後、本業に戻った我々は、ひとりさんは番組のMCとなり、僕はコントのなかでパンツ一丁になって、お尻に生け花をされていた。本業を頑張った先にソーイング・ビー日本代表としての未来が待っている、そう信じている。