リーダーの感情表現には意味がある
孫氏は、宮川氏に対して無責任な怒りをぶつけたのではない。怒りを通じて、組織の限界を突破させようとした。無謀とも見える目標を掲げ、現場の現実を受け止め、それでも前に進む覚悟を共有させようとした。怒りはその手段だった。
事業において大切なのは、戦略でも技術でもない。それらを動かす「人間の意志」と「現場の実行力」である。現実が想定を超えて崩れそうなとき、リーダーが感情をあらわにすることには意味がある。言葉では伝わらない圧力や期待、緊張感を感情が背負うこともある。
感情の力は、論理を超える。特にリーダーにとって、怒りとは最も原始的かつ説得力のある「伝達手段」である。事業の局面において、何が重要かを見極め、必要なときに必要な感情を示すことが、組織を動かす鍵となる。