国際開発庁の事業の83%廃止を打ち出したDOGE
大胆な政府効率化のために、大統領令によりDOGEが設置された。大統領令とは、法律を実施するために大統領が各省庁に通知するものである。米国の政治制度上、Department(省。現在15省存在)は議会が法律で設置を認める。法令上、DOGEは諮問委員会(Commission)に相当する。しかし、トランプ大統領の判断で、DOGEは各省に対し影響力を発揮し、DOGEを率いるマスク氏は閣議に出席した。DOGEは各省の事業の見直しを行い、国際開発庁はDOGEの見直しを受けて、83%の事業を廃止し、残る17%を国務省に統合するといわれている。
しかし、DOGEの一方的な定員・組織削減案について、主要閣僚の多くは不満をためており、激しい対立が報道されていた。25年3月7日の「ニューヨーク・タイムズ」によると、3月6日の閣議では、トランプ大統領は、政府効率化に関し、今後、担当となるのは長官たちであり、マスク氏のチームは助言のみになると述べている。
なお、マスク氏は、法律上の特別政府職員であると説明されていた。この特別政府職員とは、専門的な知識や経験を持つ外部の専門家を政府が一時的に(最長130日間)任用するべく、通常の連邦職員の採用手続きよりも柔軟性を持たせるために導入されたものである。しかしながら、DOGEの役割などから見ると、DOGEを率いるマスク氏の役割は重要で、大統領の任命に上院の関与が必要である上級公務員(Primary Officer)に該当するのではないかとの議論もあった。結局、5月30日、マスク氏は政府の職を去った。
大統領が最初にやる仕事と、大統領補佐官の役割
大統領が任命する官職は4000に上る。このうち、上院の同意を必要とするのが1200といわれている(大使、連邦最高裁判事、連邦検察官などが半分)。現在の政治日程では、大統領選は11月の第1月曜日の次の火曜日(憲法規定)に行われ、1月20日に就任する。この3カ月弱の間に人事構想を固めるのは困難といえる。また、上院の同意を必要とする各省長官などは、公聴会に向けた準備や手続きも大変である。
1962年の大統領選を勝ち抜いたケネディ上院議員は、大統領選に明け暮れて大統領となってから任命すべき人事がまったくできていない状況だったといわれている。また、2000年の大統領選では、接戦のフロリダ州の開票結果を巡り、ブッシュ候補の勝利が確定したのは12月13日であった。このため、短期間で人選を固めることとなった。1月20日の大統領就任式当日、ブッシュ大統領は、14人の閣僚指名を上院に通知し、同日、国務長官、国防長官、財務長官など7閣僚について承認が得られた。また、ブッシュ大統領は、各省庁に対し、自分が指名した閣僚を上院が承認するまでの間、スタッフの採用は決定しないよう通達を出している。
なお、大統領として選出される者の多くは上院議員や州知事を経験しており、政治、政策について一定の人脈がある。民間出身のトランプ大統領の場合は、ホワイトハウス・スタッフ、各省幹部に誰を充てるか、十分な知識がなく、共和党系の人脈に頼ったが、結局、多くは大統領の考えと合わず、去ることになった。トランプ大統領は、1期目の最大の失敗は人事だとしている。