
昨今、応援したい人や物に対して「推し」という言葉がよく用いられるようになった。それは、ホストクラブにハマる女性たちも例外ではない。いわゆる「ガチ恋」ではなく「応援している」などの意味合いが強いそうだが、この「ホストを推す」という行為は、ある問題をはらんでいた――。※本稿は、佐々木チワワ『歌舞伎町に沼る若者たち 搾取と依存の構造』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。
「担当」と「推し」
はどう違うのか?
アイドルと言えば昨今、「推し」という言葉が盛んに使われる。応援したい人や物に用いられる「推し」は、「疑似恋愛」的な眼差しをいったん無効化するような色をもっている(注1)。
「ガチ恋」という恋愛感情を抱いていることを隠すためや、ホストとの関係性をとくに求めていないという主張の際にたびたび使われる「推し」は、「担当」とはやや違う意味を含んでいるようだ。
「相手との関係性を求めるときは『担当』って呼んでましたね。好きになってほしいとか、付き合いたいとか。相手の感情と時間を買うためにお金を使ってた。だから正直、担当にナンバーワンでいてほしいとか、いくらまで売れてほしいとか、そういう気持ちはなかったです。
でも、その後指名したホストは『推し』って感じで。キラキラしててカッコイイから、売れててほしい。ナンバーワンが似合う人だから、私がお金を使うことで少しでも意味があったら嬉しいなって。
付き合いたいとかはないです。幸せでいてほしいというか。だから使う金額は前のホストのときより減りましたね」(20代・女性)
(注1)上岡磨奈『アイドル・コード 託されるイメージを問う』青土社、2023年