「推す」行為の対象はアイドルのみならず、ホストにも及んでいる。では、ホストを「推す」とはどういうことなのか、アイドルとどう違うのだろうか。

「相手と自分の関係性」
で悩むホストと姫

 ホストと姫は、アイドルのように「どう応援するか」「自分の熱量はどれくらいか」といった問題ではなく、「相手と自分との関係性」に頭を悩ませる。

 アイドルと違い、ホストとはLINEや電話をするなど、一般的なコミュニケーションと近いためだ。

 自分(客)が出せる金額はいくらか、相手(ホスト)にどこまでの行動を求めるのか、相手を信じることができない、本気で好きになってしまった……など悩みは尽きない。

 ホストと客はアイドルとファンの関係と違って、互いに「相手の言い分」があるなかで金銭が発生しており、かなり特殊で複雑な関係にあると言える。

 自分が相手に認知されていて、なんらかの関係性が構築されている以上、たとえ「ガチ恋」ではないとしても、それを「推し活」と呼んでいいものなのだろうか。

 ホストは客を「誘惑」するが、客側も自分の使える金銭や積み上げてきた関係性を武器に、ホスト側と駆け引きする。そもそも、相手と連絡が取れて駆け引きができる状況であり、一方的ではない関係の人間と「推し」として関わっていいのだろうか。

夜の街に存在する
「親密性の労働」とは?

 姫とホストの関係を考察するうえでヒントになるのが、「親密性の労働」という概念である。

 これは、従来は労働の範囲外とされていた家事やケア労働といった親密圏の活動を労働として捉えるものであり、「肉体労働としての家事労働からケアや売春まですべてを括ることができる(注2)」。

 一般的に親密性の世界と経済の世界は「互いに敵対する2つの別々の領域」であり、相容れない前提だが、それでも夜の街には親密性の労働に経済が介在する事業が多く存在する。

(注2)落合恵美子・赤枝香奈子編『アジア女性と親密性の労働』(京都大学学術出版会、2012年)