「プロ意識」を
求めすぎるのは暴力的?

 また、アイドルが好きでホス狂いになった女性のなかには、アイドルと同じような徹底した「プロ意識」をホストに求めることがある。

「アイドルなら、たとえ恋人がいたとしても、ファンに夢を見せているのだから存在は隠せ」「人前ではつねにアイドルらしい振る舞いをしろ」というものだ。

 同様の対応をホストに求める女性たちは、彼らに彼女の存在を隠すことはもちろん、「ホスト」としてのプロの振る舞いを求める。心の中では自分のことをどれだけ嫌っていようと、本当は金づるだろうと、女性に夢を見させて完璧に対応してみせろという。

 SNS上では「これだけ金を使っているんだからそう言いたくなるのも当然。プロとしてメンヘラも受け止めろ」という投稿も時折見かける。

 アイドルに対してならば運営に文句を言い、SNSで発散することはできても、本人に直接そうした発言をすることは難しい。

 しかし、ホストに対しては容易にできてしまう。「こっちは客で、お前はホストでプロなんだから」と過剰なサービスを強いることは少々暴力的ではないか。

「ホストを始めて2年くらいは、全部お客様に合わせてて。いまから来いって言われたら会いに行ってたし、全部受け入れてた。

 でも、そうするとやっぱりストレスがすごくて。自分が自分じゃなくなっていく感覚になりました。それだけ合わせたのに、思ってた金額を相手が使わないとイライラしてしまったり。

 いまは自分がやりたくないことはやらずに、無理しないって決めて。結果売上は下がったけど、精神衛生上はめちゃくちゃいいですね。自己肯定感が低くて始めたホストだけど、最初は、ホストらしくしなきゃって頑張りすぎてたなと。

 ありのままの自分を好きになってくれる子もいるって思えて、いまはわりと楽しくホストできてます」(20代ホスト・月間1100万円プレイヤー)

 もちろん、接客業としてのパフォーマンスに乏しいホストには、金を使う必要性が低くなる。しかし、恋人とは違い金銭を交えた関係性で、「推しだから」「ホストだから」こうあるべき、こうするべき、といった偶像崇拝を押しつけながら、目の前にいる人間を消費する客の振る舞いはグロテスクとも言えないか。