では、どうすれば部下は動くのか?
部下が挑戦的な目標に対して動かない背景には、「納得感の欠如」と「行動の優先順位が下がっている」という構造的な課題があります。
では、リーダーとしてどう働きかければ、部下は自ら動くようになるのでしょうか? ここからはその具体的な手法をお伝えします。
1. 目標の「意味づけ」を徹底する
部下に行動してもらうためには、目標そのものに「なぜそれをやるのか?」という意味づけが必要です。
たとえば、メンテナンス事業の強化についても、「単に利益率が高いから」ではなく、「これからの時代はサービスを含めた提案型営業が不可欠であり、自分たちの仕事の幅が広がる」「技術者の価値がより評価される時代が来る」など、個々の仕事のやりがいや価値につながるストーリーを伝えることが大切です。
2. 部下に“自分ごと化”させる仕掛け
リーダーからの一方的な目標提示では、部下は当事者意識を持てません。そこで、目標の一部を現場メンバーに「つくってもらう」ことが効果的です。
たとえば、「どうすればメンテナンス事業を現場が負担なく取り組めるか?」「お客様にどう提案すれば価値が伝わるか?」といったテーマを投げかけ、現場発のアイデアを吸い上げる機会を設けるのです。自分たちで決めたことには人は責任感を持ちます。
3. 小さな成功体験を“見える化”する
挑戦的な目標は、遠くて見えにくい山のようなものです。だからこそ、小さな成果をこまめに「見える化」して共有することが必要です。
たとえば、「今月はメンテナンスの引き合いが○件増えた」「導入先での稼働率が改善した」など、定量・定性的な成果をチームで共有することで、「やれば結果が出る」という手応えを得られるようになります。
4. 評価と報酬の“連動”を忘れない
やはり、人は「報われる」と思えることに力を注ぎます。努力と成果がきちんと報酬や評価につながる仕組みがなければ、長期的にはモチベーションを保てません。
必ずしも金銭報酬でなくても、「目標達成者には裁量のあるプロジェクトに抜擢」「表彰を社内で行う」など、行動と成果に対する正当な評価を伝えることが重要です。
目標は「数字」ではなく「物語」
挑戦的な目標とは、単なる数値の達成ではありません。それは、組織や個人の「未来像」を形にするための道しるべです。
だからこそ、リーダーは「なぜこの目標が必要なのか」「その先にどんな景色が広がるのか」を繰り返し語る必要があります。
目標を“物語”として伝えること。それこそが、部下の心を動かす最も本質的なアプローチなのです。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。