玉木氏の英語が炎上した明確な理由としてはまず、この発言はスピーチではなく質疑応答であったことが挙げられます。

 基本的に事前に決まった内容を一方的に話すスピーチよりも、質疑応答の方が何倍も難しいものです。その場で相手の発言を正確に聞き、意図をくみ取り、内容に即して正確に回答する必要があります。脳内で日本語の模範回答を作っても、それを英語に訳してスピーキングしなければなりません。その違いは以下のように整理できます。

【英語スピーチ】
・事前準備が可能
・英語のみでOK
・アウトプットのみ(スピーキング)

【質疑応答】
・事前準備は難しい
・英語と日本語の両方が必要
・インプット(リスニング)とアウトプット(スピーキング)

 さらに、この質問について玉木氏は、色んな意味で心理的動揺があったのかもしれません。それで適切な英文を考える余裕がなかった可能性は高いでしょう。英語力に自信があってスピーチは英語で行ったとしても、質疑応答は通訳を付けるべきだったと思います。

 一方、小泉氏のsexyは、「魅力的で関心を引く政策が必要だ」という意図で、実はそこまでおかしな使い方とも言い切れないものでした。一例として米紙『The New York Times』でも、「A Sexy Investment, but Read the Fine Print」(日本語訳「魅力的な投資ですが、詳細は確認を」、2012年9月23日付)という記事タイトルでsexyを使っています。

 しかしながら、日本語の外来語としての「セクシー」で捉えると「性的な魅力」といったニュアンスしかないため、小泉氏の意図とは違った印象を与えてしまいました。日本の政治家が英語で話す際には、英語と日本語(外来語)における「ニュアンスの違い」も念頭に置いて、細心の注意が必要なことがよく分かる例です。

 では、歴代の首相でスピーチのみならず質疑応答もこなせる英語力を持ち合わせた人物とは、誰だと思いますか?