中学受験との違い
「偏差値で比較できない」

 中学受験のような「どの学校が偏差値的に優れているか」という単純な比較ではなく、「家庭の求める答えにどの学校がもっとも近いか」という観点で選ばれるのが私立小学校であることも、中学受験とは違っています。

 また、洗足学園や聖徳学園などは、生徒の多くが中学受験をする学校として知られています。小学校で受験して、また中学受験をしなければならないのかと思うかもしれませんが、保護者にしてみれば、周りの子がみんな受験するという環境のほうが、子どもも中学受験に向かいやすいというメリットがあります。

 公立小学校の場合は、私立中学を受験する子どもは圧倒的多数ではなないため、たまたま仲良くなった友達が受験をしない場合、放課後一緒にはいられなくなります。私立小学校なら、学校の友達と放課後同じ塾に通う可能性があり、離れ離れになりにくいという利点もあります。

 以上は保護者から見た事情ですが、視点を転じれば、私立小学校側の思惑もあります。

 現在都内にある私立小学校は55校、私立中学校は187校(東京都資料107ページより)。学校側も選ばれる立場になっている中で、中学より小学校のほうがより数が少ないため、競争率が低い小学校の段階で選んでもらいたいと考えています。

 これは経済的な意味合いにとどまりません。授業料の確保以上に私立小学校にとって価値があるのは、小、中、高12年間(場合によっては大学も含め16年間)にわたって学校の文化や伝統を受け入れてくれる家庭の「コミットメント」と「ロイヤリティー」です。

 現在の公教育は過渡期にあり、学校と保護者の間に考え方のずれが生じることも少なくありません。その点、私立小学校受験を経た家庭は、学校の方針に対するある程度の理解と受容の下地があります。学校側としては、そうした家庭が(それもできるだけ第一志望で)入学してくれると安心できるのです。

 こういった学校側の事情もあって、それまで中学高校だけだった私立校が小学校を設置した結果、私立小学校の数自体も増えているのです。