
史実では男性政治家
ドラマは「女性政治家」だから描けたこと
史実ではやなせたかしさんの妻・暢さんは高知県出身の男性国会議員の秘書として東京で働いていたという。ドラマでは女性になったことで、当時の女性政治家の困難もドラマから感じられる。
戸田さんは、戦後の日本で女性が政治に関わることについてどう思っただろうか。
「本当に想像でしかないのですが、演じるにあたり、当時の女性政治家の記事もたくさん読ませていただき、今ですら、まだ女性が何かするということにおいて少し大変なところがある中、まして戦後、男性陣の中に混じって世に出ていくことには想像を絶する大変さがあったであろうということを感じました。
資料を読んで特に印象に残ったのは、皆さん、颯爽としていると感じたことです。例えばばりっとスーツを着ていたり、赤いマニキュアをしていたり、女性としての色合いを隠すことなくどんどん前に出ていく。
とてもかっこいいなと感じました。みんながみんなそうではないでしょうけれど、憧れの存在になったのだろうなあと」
すてきなところは外見だけではないと戸田さんは続けた。
「思想をはじめとして、自分の思いを臆せず言うところが、ハチキンらしいですよね。演説一つとっても、街頭で女性が拳を上げて何かを言い放つっていうのはそれまでなかったようなことで。
街にそういう女性が出てきてリーダーシップを取ることは、本当にすごいことなのだということを、画面からどれくらい感じてもらえるかを考えて臨みました。いかにすごいことか、なるべく視聴者の皆さんにも理解してもらえたら嬉しいです」
戸田さん自身は女性であることに対して不自由を感じたことがあるのか。女性ということだけでなくやりたいことを阻む壁にぶつかったことはあるのだろうか。
「私は子どもの時からずっとこの世界にいますが、幸いなことに女性だからといって下に見られるような経験はなかったです。ただ、売れている、売れていないということには格差を感じた経験はあります。
売れない歌手時代を経験して、売れているとできることと、売れないとできないことが確実にあると感じた時代もあるんです。これ、売れていたらやれたんだろうなとか、こっちに行けたんだろうなとか、そういったことは確実にありました。
その一方で、格差のない場所もあり、一概には言えないということも知っています」