
「おなごこそ大志を抱きや」
父代わりのような釜次の願い
のぶは釜次たちに代議士に引き抜かれたと話す。でも、行かないと言う。高知新報に恩返しをしなくてはいけないからと。
釜次はのぶに本心を問いかける。それから飾ってある帽子に向かって語りかける。結太郎(加瀬亮)は女も大志を抱かないといけないと言うだけ言ってこの世を去った。残された羽多子は女ひとりで苦労したと言うのは、息子を責めているのか、羽多子をねぎらっているのか。
嵩(北村匠海)も話を聞きつけたらしく見舞いにやってくる。
釜次は嵩の漫画はくだらないがおもしろいとニヤリ。
ラジオを「千尋くん」と呼んで聞いていて、千尋(ラジオ)に海軍に志願しなかったら嵩の漫画が読めたのにと語りかける釜次。帽子やラジオに語りかけるのは病で少し意識が遠のいているからだろうか。
のぶは嵩に、釜次のために漫画を書いてほしいと頼む。
嵩、渾身の釜次が主役の四コマ漫画が出来上がった。あんぱんを独り占めしようとして、それが腐っていてひどい目にあうというものだ。
「ばかじゃのう」と釜次はうれしそう。こんなふうに何をやっても「ばかだなあ」と笑って済ませることが平和への一歩であると筆者は思う。怒りや憎しみを抱かず「ばかだなあ」と笑ってゆるす。そんなふうに生きていければいいのに。
漫画には家族がみんな描かれていた。これはいい記念になるだろう。
その晩、釜次は家族を集め、帽子を手にしながら遺言のようなものを語る。
石屋を自分の代で畳むと宣言。「この家に縛られたらいかんぞ」「おまんらも面白がって生きえ」「おなごも、いや、おなごこそ大志を抱きや」
羽多子「わてもおなご扱いでえいですろうか」
釜次「当たり前じゃ」
くら(浅田美代子)「わては?」
釜次「え…えいぞ」
くら「なんで間が空くがぞえ」
最後までちょっとふざける。でも最後の最後は帽子をかぶって(かっこいい)のぶに決め台詞を吐く。
それが釜次。戦争中、家や国のために尽くしたのぶに自由になるよう背中を押すのだ。
「おまんを待ちゆう人がおったら、そこへ向こうて走れ……おまんが助けたい人がおるがやったら、どればあ遠くても走っていけ」
「こんまいときから、のぶはそういう子じゃ……なりふり構わず走れ」
「間違うても、転んでもえい。それも全部、面白がって生きえ」
帽子をかぶって、まるで父代わりのようでもある。
「釜じいの孫で良かった。最高や」とのぶは大きな瞳に涙をためて言う。
蘭子もおもしろがって生きると宣言し、メイコは面白がって生きていると感じるのは歌っているときだと自覚したようだ。