ここまでの状況をまとめると、宇奈ととと吉野家は低価格戦略、すき家は諸物価高騰の事情を織り込んだ合理的な価格設定ながら、マルチパスウェイとでも呼べそうな多様な価格帯でのうなぎ提供という形で、各社の価格戦略については方針が分れている様子です。
さて、こういった安価なチェーン店のうなぎの産地はどこなのでしょうか?
実はこの記事の後半では競争戦略上重要なのは「産地」でも「安全」でもなく「別の要素」に情勢が変わってきているという話をするのですが、まずは「産地」の話をしましょう。
基本的に安価にうなぎを提供するチェーン店のうなぎの産地は中国です。日本の輸入うなぎの約9割が中国産、約1割が台湾産で、この2つで輸入の大半を占めます。
国産の養殖うなぎではここで取り上げたような価格ではうなぎを提供することはできません。
吉野家はホームページで産地を中国と明記してあります。すき家のメニューページではうな丼の産地のボタンを押してもなぜか牛肉と米の産地しか表示されませんが、すき家を運営するゼンショーグループの「食の安全へのこだわり」のページではうなぎの管理体制の図で中国の税関で検査を受けていることが明記されています。
注目したいのは、ゼンショーがホームページで主張していることが産地ではなく安全性だということです。
中国産の養殖うなぎについて不安の声をあげる消費者は一定数います。過去、中国での養殖の状況が何度かメディアで報道されたことがあるのですが、以前の中国の養殖場は水質が悪かったり、うなぎが病気にならないように薬漬けにしたりと、たしかに品質に不安があったものです。
それでゼンショーやうなぎを取り扱う日本の商社は、この養殖場に投資をし、厳しい管理をすることで、現地のうなぎ養殖が科学的かつ衛生的に変わってきた歴史があります。大手飲食チェーンが提供するうなぎは、現在では中国産が主流でかつ、その品質はかなり向上してきているというのが経済評論家としての私の評価です。
でもチェーン店によって「安い鰻はなんとなく味が違う気がする」という読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?実はその味覚は結構正しいのです。