なぜJOYは、ライバルのように無骨でタフなデザインにしなかった?
F:スペーシアギアやデリカミニの人気を見て、「そろそろウチもSUV調をやらないとヤバいかも……」と慌ててJOYを出したのではない、と。
諫:その見方は明らかに間違っています。いま申し上げたとおり、もともと3代目の企画段階から「何か少し違うものを」と始めていますので。それプラス、軽のニーズが多様化していて、日常にも遊びにも使えて、少し個性があるものを出して、日本のみんなの生活を豊かにしていきたいよね、という思いもありました。
F:私は“SUV調”という言い方をしていますが、他社製品のこの手のクルマは、よりタフで無骨で、アウトドアテイストを前面に押し出すデザインを採用しています。それらと比べると、JOYは少し控えめで優しく感じます。タフ系の流れに乗らなかったのはなぜですか?
諫:企画段階では、もちろんそういう話も出てきました。他社さんのようにアウトドアチックでコテコテのラギット(無骨)系で行くのか、それとも違う方向で行くのか。これはかなり議論しました。議論していた頃、世の中はコロナ禍真っ最中だったんですね。人々の価値観がコロナによりガラッと変わりつつある時期だった。
F:それはどういう……。
コロナ後、アウトドアに求める価値は「リラックス」に変わった
諫:時代の変化でアウトドア志向になっていたことは間違いありません。ですが調査を進めていくと、若者を中心にアウトドアに求めることが「リラックス」中心になっていることが分かりました。つまり目をつり上げたガチガチのキャンプではなく、グランピングだったり、あるいは「チェアリング」だったり。同じアウトドアでもユルい感じの方向へ移り始めていたんです。
F:チェアリングとは何ですか?