日本はアベノミクス、
米国はアベコベノミクス?
米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)がQE(量的緩和)政策からの出口を探っているということで、市場が大きな混乱を起こしている。日本もその影響を受け、最近は為替レートが大きく円高方向に動き、株価も大きな下落を起こしている。
それでも、安倍政権が発足してからの動きで見れば、まだ株価は高いし、為替レートも80円前後の円高時期と比べればかなりの円安水準ではある。ここ数週間の市場の動揺の原因は明らかに米国発であり、今の時点ではアベノミクスに修正すべき点があるとは思われない。
とはいえ、今後の展開を考えれば、今、世界の市場で何が起きているのかを整理しておく必要はあるだろう。
今の市場状況を、アベノミクスをもじって「アベコベノミクス」と名づけた人がいた。経済学の教科書に書いてあるのとは逆の事態が起きているという意味でアベコベだというのだ。ただし語呂合わせでアベノミクスをもじってはいるが、アベコベなのは日本ではなく米国の経済を指している。
米国では最近、経済が非常に堅調であるとの指標が出ると、株価が下がりドルは安くなるという動きになる。逆に、米国経済が軟調であるとの指標が出ると、株高・ドル高となるのである。経済学の教科書とはまったく逆のことが起きているのだ。
こうした事態に対する市場の解釈は次のようなものだ。
米国の経済指標で米国経済が順調に回復しているものが出れば、市場はFRBの出口戦略(量的緩和の終了)の時期が早まると予想する。量的緩和が出口に向かえば、米国の景気にはマイナスの影響が出るだろう。だから、株価は下がるし、ドルも売られる──ということのようだ。
逆に景気回復が期待したほど進んでいないという指標が出れば、出口の時期は遅くなるとの見通しが広がり、為替はドル高、株価も高くなる傾向にある。
つまり、株価や為替レートは、経済の実体の動きというよりは、それに対する金融政策の動きを意識した展開となっている。政策が大きく変化するかもしれないという懸念が、市場を大きく動かす要因となっているのだ。