画像:特集『京都企業の血脈』#5キービジュアルPhoto by Fusako Asashima

毎年12月、京都の花街・祇園甲部にある最高級お茶屋「一力亭」では、京都の有力企業経営者が一堂に会する秘密の宴が開催される。三菱UFJ銀行が主催する通称「31社会」なるものだ。特集『京都企業の血脈』(全18回)の#5では、秘密のベールに包まれた交流会の正体をあらわにするとともに、三菱UFJ銀行と京都企業との密接な関係性を「京都企業の取引先金融機関リスト」で明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

京都支店長は三菱UFJ銀の「出世ポスト」
祇園祭・山鉾巡行への参加がステータス

 3年ぶりに開催された京都・祇園祭。そのメインイベントは34基ある山鉾(やまほこ)が京都市中心部を練り歩く山鉾巡行だ。くじで巡行の順番が決まる山鉾とは異なり、長刀鉾(なぎなたほこ)はくじ取らずと呼ばれ、決まって巡行の先頭を務めることになっている。

 三菱UFJ銀行京都支店は下京区の長刀鉾町にある。歴代の京都支店長(かつては京都支社長)は毎年、かみしもをまとって巡行に参加するのが慣例になっている。京都支店長は執行役員ポストで、全国の支店長の頂点ともいえる存在。長刀鉾を引き回すことはステータスの象徴のようなものなのだ。

 実際に、京都支店長は出世の登竜門である。三菱UFJ銀行の中で最大の支店であり、京都支社長(当時。現京都支店長)を経験した長岡孝氏(現・三菱UFJ証券ホールディングス特別顧問)、籔田健二氏(現・三菱総合研究所社長)や谷口宗哉氏(現・三菱UFJモルガンスタンレー証券副会長)は副頭取まで出世している。三菱UFJ銀行における京都支店のポジションの高さが分かろうというものだ。

 京都支店長には祇園祭に参加すること以外にもう一つ、“大役”がある。年末に開催される「31社会」の仕切り役を任されているのだ。

 毎年12月、八坂神社に程近い花街・祇園甲部にあるお茶屋「一力亭」では、京都の有力企業経営者が一堂に会する秘密の宴が催されている。一力亭といえば、歌舞伎の演目「仮名手本忠臣蔵」で赤穂藩の筆頭家老・大石内蔵助(役名は大星由良之助)が通ったとされる格式高いお茶屋だ。

 次ページでは、秘密のベールに包まれた「31社会」の正体を明かすとともに、三菱UFJ銀行が京都エリアで独り勝ちとなっている理由を「京都企業の取引先銀行リスト」を使って説明しよう。