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1月26日、野村證券がウェルス・マネジメント部門(旧営業部門)に所属する社員を対象に、借金の返済状況などが分かる信用情報を2月18日までに会社へ提出するよう求めたことがダイヤモンド編集部の取材で判明した。2024年に多額の借金を抱えた元社員が、顧客に対する強盗殺人未遂と現住建造物等放火の罪で起訴された事件を念頭に置いた措置だ。クレジットカードの取引事実や借入残高、信用指数などの個人情報を会社側が求めることに違法性はないのか。連載『金融インサイド』の本稿では、厳秘の内部文書と関係者への取材を基に、野村證券が敢行した施策の詳細と狙いを明かす。さらに専門家への取材を踏まえ、今後の運用次第で個人情報保護法違反になり得る点を検証する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
野村がCICへの情報開示を社員に要請
事実上の“借金調査”に法的な問題は?
「当社のことを心から信頼していただくために、全てのお客さまに安心してお取引いただける金融機関となるために、今後できることの全てを実行してまいります」
野村證券の奥田健太郎社長は2024年12月3日の記者会見で、元社員が顧客に対する強盗殺人未遂と現住建造物等放火の罪で起訴された事件を受け、こう語っていた。
実際、同社は数々の再発防止策を講じてきた。顧客宅訪問時のチェックインとチェックアウトを厳格化し、業務予定をこれまで以上に細かく管理するようになった。社用携帯やドライブレコーダーのデータを活用し、不審な行動を検知する仕組みも導入。営業手法が根本から変わるほど、24年の事件が現場に与えた影響は大きい。
ここまでは、24年の会見で奥田社長が公表した内容でもある。だが同社は、他にも大胆な再発防止策を極秘裏に進めていた。指定信用情報機関のシー・アイ・シー(CIC)を利用した、事実上の“借金調査”である。
CICはクレジット会社の共同出資により設立された信用情報機関で、割賦販売や消費者ローンなどのクレジット事業者が加盟している。個人でも情報開示を求めれば、自身のクレジットやローンの契約内容、支払い状況、借入残高といった信用情報を閲覧できる。
この開示制度に目を付けた野村證券は26年1月26日、ウェルス・マネジメント部門(旧営業部門)に所属する社員に、信用情報を取り寄せて会社に提出するよう求めた。提出対象には、取引事実から算出される信用指数や、その算出に特に影響した要因(クレジット・ガイダンス)も含まれる。
野村證券のある社員は「クレジットカードの履歴や借入額に加え、信用指数や、その指数に影響した理由まで個人で開示請求して提出することには抵抗がある。会社からは任意と言われているものの、拒めば多額の借金を抱えた問題社員と見なされかねず、提出せざるを得ない状況だ」と話す。
また、情報開示を行う利用者に対してCICは、クレジット・ガイダンス付き信用情報の第三者への提供は不測のトラブルにつながるおそれがあるとして、慎重かつ厳重な取り扱いを呼び掛けている。
信用指数やその要因まで把握できる信用情報の提出を、会社側が社員に求めることに法的な問題はないのか。
次ページでは、野村證券がウェルス・マネジメント部門の社員に信用情報の提出を要請した経緯や施策の詳細を、内部文書や関係者への取材を基に明らかにする。本施策について野村證券に質問したところ、同社は「社員一人ひとりの財務状況を把握する取り組みを進めている」と事実を認めた上で、その背景と狙いを詳細に回答した。併せて、今後の運用を誤れば個人情報保護法違反に該当し得ることを、専門家の見解を踏まえて検証する。







