薬膳の考えの一つに食材が持つ、体を温めたり冷やしたりする性質があり、これを「五性」といいます。
温める力が強いものを「熱性」、弱いものを「温性」、温めも冷やしもしないものを「平性」、体の熱を取るものを「涼性」、熱を冷ます力が強いものを「寒性」としています。それぞれの季節に合わせ、これらの性質を知った上で調理すると、体調のバランスを取りやすくなります。
食材のなかで一番多い性質は平性ですが、夏には体の熱を冷ます涼性や寒性のものが多く出回ります。
7月は気温ばかりか湿度も高く、蒸し暑い季節です。本来、体の熱と湿を取る食材を上手に組み合わせるといいのですが、現代は冷房も完備されているので、昔のように極端に熱を取るものばかりを食べると冷え過ぎる恐れもあります。自分の環境に合ったものを摂取するようにしましょう。また、調理法や組み合わせる食材で、胃腸を冷やさないようにすると夏バテも予防できます。
夏に出回る食材の性質は、以下のように分かれます。
平性=エダマメ、トウモロコシ、ピーマン、パイナップル、ウナギなど。
涼性=キュウリ、ナス、オクラ、レタス、セロリ、マンゴーなど。
寒性=トマト、ニガウリ、ズッキーニ、トウガン、スイカ、メロンなど。
温性=カボチャ、ショウガ、シソ、ミョウガ、タマネギ、モモ、アジ、イワシなど。
熱性=トウガラシ、ニンニク、コショウなど。
この時期は涼性や寒性の食材をメーンに、温性や熱性の食材やスパイ
スを組み合わせて冷え過ぎないようにバランスを取るといいでしょう。
タイやインド、中国の四川省などの高温多湿の地域では、トウガラシやニンニクなど熱性で辛味の食材を食べて体の中にこもった熱と湿を汗と共に体外に出すことにより、体温や水分のバランスを取っています。タイ、インドのカレー、四川省のマーボー豆腐などはその知恵が生み出した料理といえます。
夏に出回るウリ類の野菜(キュウリ、トウガン、白ウリ)や、果物(スイカ、メロン)は利尿作用とともに体を潤す作用もあります。汗を大量にかいたときは塩分補給も必要ですので、スイカに塩の組み合わせは熱中症予防に適しています。
涼性のナス、寒性のズッキーニ、トマトと温性の鶏肉やエビを組み合わせたカレー、タマネギとレタスのサラダ、キュウリとアジの酢の物など。