note解剖#2Photo:Maki Nakamura/gettyimages

オールドメディアからの収入が先細る中、「noteが柱の一つになった」。そう語る料理研究家・大原千鶴さん。手数料を抑え、売り上げの8割超を還元する「クリエイターファースト」のnoteのモデルが多くの書き手に受け入れられる一方、実際に収益を得られたユーザーは全体の数パーセントにすぎない。プラットフォームとして「誰もが稼げる場」であり続けるための治安維持と仕組み作りの葛藤が続く。長期連載『メディア興亡』内の特集『note解剖』#2で、その現場に迫る。(フリーライター 松田晋吾)

年収500万超、メディアの拠点が移行
“中抜き”を排した直接課金が書き手を呼ぶ

 2026年2月下旬、料理研究家の大原千鶴さんのnote開設3周年を記念したイベントがnote本社のイベントスペースで開催された。月額制コミュニティの登録メンバー約40人が一堂に会し、料理への哲学やテレビ収録の舞台裏を語り合う交流の場となった。

「キューピー3分クッキング」(日本テレビ系)や「きょうの料理」(NHK)への出演、年に数冊の書籍出版――。大原さんは伝統メディアで引く手あまたの存在だ。にもかかわらず、なぜ月額制のオンラインコミュニティをnoteで始めたのか。背景には、クリエイターの発掘とnoteでの収益化支援を担うnoteディレクターの荒木俊雅氏の存在がある。

「伝統メディアで活躍していた大原さんにとって、インターネット上で新たな収入源を確立することは必要なフェーズだった」と荒木氏は語る。アカウント開設時から二人三脚で歩み、「今では自走できる状態になっている」という。

 コミュニティの仕組みはシンプルだ。月額2000円で料理好きの女性を中心に約300人が登録。月1回の料理レッスン動画に加え、レシピやコツをまとめたテキストを配信する。手数料やライターへの業務委託費を差し引いても、年間収入は500万円を超える計算だ。大原さんは「テレビや出版では難しいことも自由に発信できるし、双方向のコミュニケーションを楽しめている。収入面でもnoteは柱の一つになっている」と強調する。

 かつて収入確保のために大手メディアでの活動を目指していたクリエイターたちの拠点が、いまnoteへと移りつつある。広告不況にあえぐテレビ局の出演料や、部数減が著しい紙媒体からの収入が減少する一方、noteでは売上のうち手数料が引かれても80%以上がクリエイターの手元に残る。

 自分の価値がダイレクトに収入に反映されるこの構造こそが、書き手を引き寄せる原動力だ。noteはクリエイターの収益化を支援するために、記事の投稿方法などのサポートも積極的に行っている。

 一方、サービス開始から11年が経過した25年3月末時点でも、noteで収益を得たことのあるユーザーは累計20万人にとどまる。25年2月末時点の登録者数938万人と比べると、その割合は数パーセントだ。さらに、記事の年間流通総額の大半が上位1000人のクリエイターに集中している現状から、収益機会の偏りも見て取れる。クリエイター間の格差は小さくない。

 大原さんをはじめとするプロたちがnoteに活動拠点を移し、「直接課金」で新たな収益の柱を築き始めている。しかし、ただ書くだけで成功を掴めるほど、この経済圏は甘くはない。1000万人規模へと膨張したプラットフォームで、一過性のブームに終わらず「稼ぎ続ける」ための真の条件とは何か。次ページでその具体的な戦略と、noteが貫く独自の設計思想の正体に迫る。