無許可営業か、時間外営業か、現場に迫られる判断
磯部 事業者たちもまた学んでいて、大阪や六本木では風営法の許可を取る店が増えているんですよ。例えば、昨年5月に摘発された<a-life>の跡地にできた<BRAND TOKYO>は、ホームページに「当店舗は風営法に基づき、ダンス飲食店の許可を得ました」と明記しています。わざわざそんなことを書かなければいけない時代になったんだなと感慨深くもなりますが。
ちなみに、<BRAND TOKYO>は、メイン・フロアは風営法の許可を取っているので12時で閉め、ラウンジは飲食店なので朝まで続け、ただし、ダンスは禁止、という営業形態のようです。現行の風営法の中でいかにやるかを考えているんですね。
開沼 これまでは、「風営法上の許可を取っていないから、風営法の規制は関係ないんだぜ」という姿勢でやっていたわけですよね。
磯部 無許可営業か時間外営業なら、前者のリスクを取る店がほとんどでした。最近は後者を取る店が増えています。
開沼 それは一方で、摘発のロジックが明確になっている部分もありませんか?
磯部 そうです。許可を得ることで、明確に風営法の下で管理されることになります。ただ、前回も言ったように、警察は「時間外営業はそこまで問題視しない」というメッセージを暗に発信しているので、いまはそれに従ったほうがいいと判断しているのでしょう。
開沼 しかし、そのようなしたたかな努力をいくら重ねても、時間の経過とともに、ますます規制、もしくは権力に取り囲まれている状況になっているようにも見えます。磯部さんは、どうすればいいと思いますか?どうしようもないようにも思えてしまいますが。
磯部 いまは、警察の思い通りの方向に進んでいるようにも思います。もちろん、彼らは彼らの正義感に基づいてやっているのですが。例えば、先ほどネオヒルズ族の話をしましたが、六本木の治安が悪化した要因のひとつに、半グレの存在があります。
<FLOWER>事件の裏側を暴露して話題になった書籍『いびつな絆』(宝島社)によると、犯人グループはクラブに頻繁に出入りしていたようでした。警察としては、チャラ箱が彼らのような半グレの溜まり場になっているんじゃないかという読みもあって、摘発を進めているところもあるでしょうね。
規制が進み、脱法が進む社会をどのように捉えればよいのか。対談第4回では、繁華街浄化作戦やドラッグの問題にも触れながら、漂白される社会に訪れつつある変化へと話は深まる。次回更新は、7月29日(月)を予定。
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