またあるときは、取引実績のない生産者から製品を買ってほしいという依頼を受けたが、とても日本で売れるようなものではない。何か商品に結び付けられそうなものはないかと知恵を絞っても思い浮かばず、断るために現地に向かう飛行機の中で、「いっそこの飛行機が墜ちてくれたら…」と思ったこともあるそうだ。そして、現地の人たちと接するうちに「これだ!」と思う品物に巡り合えたときの喜び。

 そこまで彼女を突き動かすものは何かと尋ねたところ、穏やかにただ一言「怒りです」。「子どもたちを全員学校に通わせるプロジェクト」や「生産者たちの積立貯蓄プロジェクト」など、確実に将来につながり、彼ら彼女たちが生まれた国を誇れるようにとの思いは、少しずつ実を結んでいる。彼女の怒りが大きな愛に変わったのだろう。

私たちが身近にできる
取り組み

 遠い国の問題だけではない。日本は食料自給率が極端に低いことが知られている。質の良い農作物や乳製品、水産品などを供給してくれる生産者と、顔の見える関係作りをし、継続的に購入することも、日本の農業を育てることにつながる。「農家の合併を進めて効率化し、大規模農業を育てて世界的に競争できるようにする」という壮大な話も聞こえてくる。

 しかし、高く売れる質のよい食料は海外に輸出され、日本国内でそれらを口にできるのは富裕層だけ。多くの国民は国外から輸入した安い食料を口にするという将来が待っているかもしれない。

 国内の産地の分かる無垢材のみを使う「自然素材の家作り」をする工務店がある。日本は国内に大量の森林資源を抱えながら、消費量の8割は海外からの輸入に頼っている。しかも一部は、東南アジアで違法伐採したものを輸入しているとも言われている。海外の生態系を壊し続け、国内の林業は安い輸入材のために苦境に陥り、手入れの行き届かないまま森林が荒れ、日本の国土全体の荒廃につながっている。

 『自然素材の家作り』は、国産の無垢材を使うことにより山にお金が回り、山が豊かになっていくことを目指す取り組みでもある。住宅を建てるときに、このような取組みをする工務店を選ぶことも、将来世代に豊かな国土を残すことにつながる。