サナエノミクスの危機認識の甘さが招く「円安・債券安」、積極財政・緩和路線に背を向ける金融市場の“反乱”Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

高市政権のこの一年で顕著なのは債券安と円安だ。10年国債金利は3%を超えて30年ぶりの高水準となり日銀の利上げにかかわらず円安が止まらない。積極財政と利上げをけん制する首相の姿勢がインフレ加速と財政規律弛緩への不安を市場に抱かせているからだ。特集『高市政権1年 サナエノミクスの功罪』の本稿では、サナエノミクスに背を向ける金融市場の“反乱”の背景を解説する。(RPテック代表 倉都康行)

日銀追加利上げも円安160円に迫る
10年国債金利1.6%から3%に上昇

 高市早苗政権が誕生してから10月21日で1年を迎えた。

 この間、日経平均株価が4万9000円台から一時7万2000円台まで上昇したことを考えれば、市場は高市首相の経済政策を高く評価した、と思われるかもしれない。足元では6万5000円前後で推移しているが、欧米市場などと比べれば年初来の株価指数上昇率は約30%と依然高水準だ。

 だが、それは熱狂的なAIブームを背景に相対的に出遅れていた日本の半導体周辺機器などの株に買いが集中したこと、日本銀行の利上げを意識した銀行株への思惑買いが強まったことなどの個別材料を反映したものだ。

「サナエノミクス」が牽引したとは言い難い。三本の矢で改革期待を盛り上げた「アベノミクス」(結果的には一本の矢に終わったが)による株高とは全く違う。

 一方で、債券市場では、国債価格が大幅下落(長期金利上昇)し、為替市場では円安が進んだ。株高も、高市政権が醸し出す利上げ反対ムードによって円売りが誘引され「円安=株高」のイメージが強まったことも否定できない。

 日銀は9月の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切ったが、それでも円安トレンドが反転する気配はなく、再び160円台に向かう気配も残っている。そこには、高市政権に対して為替市場が抱いている「利上げ反対・円安歓迎路線」というイメージが色濃く反映されている。筆者の相場観も基本的に円安継続だ。

 そして、株や為替市場以上に高市政権に対して強い危機感を抱いているのが国債市場であることは論をまたない。1年前に1.6%台だった10年債利回りは、直近はやや戻しているとはいえ3%を突破するに至った。

 市場が高市政策に背を向けるのは、インフレ懸念と財政不安の二つの要因が挙げられる。高市政権は市場のシグナルに謙虚に耳を傾けることができるだろうか。