個人個人が心の内に
自分自身の人事部を持て!

柴崎 グローバルに通用する人材を育てるために、安倍政権は海外で学ぶ日本人留学生を現在の約6万人から12万人規模まで拡大させる方針で、そのためにかなりの予算を投じる模様です。しかしながら、海外で研鑽を積んだ学生たちが帰国しても、自分の能力をなかなかストレートに評価してもらえない日本企業の人事制度に辟易し、結局は外資系企業や国外へと優秀な人材が流出してしまう気がしてなりません。

出井 確かに、日本企業は変わらなければならないが、最も変わらなければならないのは個人だ、と私は思います。柴崎さんの経歴からすると、大学でアメフトに打ち込んでいるうちに、気がついたらソニーが採ってくれていたというパターンではありませんか(笑)。そして入社してみると、自分ならこんなことができそうだという思いと、実際に会社側がキミに求めてくる要求に少なからずギャップを感じたのではないでしょうか。

旧来型の採用・人事変革を阻む壁は多いが<br />まず個人がキャリア計画を持ち自分を変える

柴崎 確かに、そのとおりですね。大なり小なり、そういったギャップを感じました。

出井 そのことに気づいたら、少しでもギャップを縮めようと努力するのが本来あるべき姿だよね。ところが、現実にはその努力を怠っている人が少なくありません。

 だから、個人1人1人が、自分自身の人事部を心の内に持っておくべきだと思います。自分のキャリアプランを常に考え、計画をたてるわけです。

 たとえば私の場合は、「1年経ったらいったん辞めたい。休職させてください」と最初から宣言してソニーに入社しました。その1年間で、自分ができることと会社側の要求レベルがどの程度違うのか、どの部署なら自分のどういった能力を活かせそうなのかといったポイントを細かく観察してみたわけです。そのうえで1年後にはスイスに留学し、社に復帰後も「欧州のことを任せてほしい」と願い出て海外の営業畑を歩むことになった。会社を変えようとしても簡単には果たせないし、まずは個人が自分自身を変えることから始めるべきだと思います。

柴崎 なるほど、自らのキャリアを自らがあらかじめ設計しておくという自分自身の人事部ですか。いろいろ勉強になりました。本当にありがとうございました。