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家庭用ゲーム機は「オワコン」なのか?
コアユーザー層と籠城するソニーのプレステビジネス

小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部教授],石島照代 [ジャーナリスト]
【第41回】 2013年9月18日
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任天堂の基礎需要が子ども市場ならば、
ソニーの基礎需要はコアユーザー

 しかし、である。「プレイヤーはゲームを遊びたいので仕方なくハードを買う」という任天堂の山内元社長の言葉に従えば、ゲームビジネスの主役はソフト、つまりコンテンツである。いくら、廉価版ハードが出ようが、遊びたいソフトがなければハードが売れないことも、ゲーム業界の歴史が証明している。

 これまで、PS Vitaプラットフォームは、「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」(アトラス)、「イース セルセタの樹海」(ファルコム)、「デモンゲイズ」(角川ゲームス)など、「数万本~数十万本クラスの中ヒットクラスだが、熱心なファンがいる」シリーズやジャンル(以下、コアユーザー向けタイトル)を丁寧に集めてきた。

 筆者(小山)のようなコアユーザー向けタイトルを押さえていることは、PS4発売後を視野に入れたときに重要性を増す。据え置きゲームハードがPS2からPS3に代替わりしたとき、開発費と開発難度の高さから中小規模のゲーム会社はPS3ではなくPSPでの開発を選んだ。結果として、PSPは「そこそこの予算規模で、昔ながらのゲームらしいゲームが発売されるハード」となり、商品寿命はDSより長くなった。

 PS3発売から7年が経過した現在では中小規模のゲーム会社もPS3向けゲームを発売しているが、PS4発売後は携帯ハードに流れる可能性が高く、その際にコアユーザー向けタイトルが集まっているVitaに来る可能性は高いだろう。大人気ブラウザゲーム「艦隊これくしょん(角川ゲームス)」も、PS Vita用として発売される可能性が高いといわれるが、正式な発表はまだない。

 先ほどの調査で、ゲームユーザーはどんなハードのゲームも遊ぶという調査結果を紹介したが、それでも、ちょっとした暇つぶしとしてゲームを遊ぶソーシャルゲームアプリのユーザー層が、コアユーザー向けタイトルを遊ぶのはつらいものがある。つまり、コアユーザー層がソーシャルゲームを遊ぶことはあっても、その逆はなかなかないと考えることが自然だろう。そのことを踏まえると、PS Vitaのコアユーザーシフトというプラットフォーム戦略は、3DSともスマートフォンとも全く別のアプローチであり、自らが築いてきた強みを生かして「籠城」するにはぴったりである。

前回、「任天堂は玩具・ソニーはAV・マイクロソフトはWindows」とそれぞれの強みを述べたが、今回は「歴代最小のプレイステーション」として「PS Vita TV」も発表されている。これについても、解説したい。ゲーム機を「リビングに置く機器」、「携帯型プレイヤー」と考える、AV企業としてのソニーだからこそできた発想である。

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小山友介
[芝浦工業大学システム理工学部教授]

1973年生まれ。芝浦工業大学システム理工学部教授。2002年京都大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京工業大学助教等を経て現職。東工大時代に経済シミュレーション研究に従事、そこで学んだコンピュータサイエンスの知識を生かしてゲーム産業研究を行なう。専門はゲーム産業を中心としたコンテンツ産業論と社会情報学。2016年6月末に『日本デジタルゲーム産業史』 (人文書院)を刊行。

石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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