国債暴落による金利急騰のリスク
私は国債価格暴落のリスクについてずっと考えてきた。もう10年以上前からそのリスクについて言及してきた。その間も国債利回りである長期金利は下がる一方であった。来るはずもない国債暴落が来ると言っている狼少年だと批判されたこともある。
しかし、これまで国債価格の暴落が起きなかったから、今後もそんなことにはならない、と考えるわけにはいかない。スペインやイタリアで起きたことが、日本で起きないという保証はない。
ちなみに、イタリアで国債価格の暴落(国債金利の急騰)が起きたとき、その公的債務はGDPの125%程度であったという。日本の公的債務はGDPの200%を超えている。それでも日本では絶対に国債価格の暴落が起きないと言い切ることはできないだろう。
国債価格の暴落の問題がやっかいなのは、その確率が非常に小さいということだ。仮に5%あるいはそれ以上の確率で国債価格が暴落すると市場が思えばとっくに暴落している。そうなっていないのは、市場が国債価格の暴落の確率を非常に小さいと見ているからだ。
確率は小さいが、いざそれが起きたら大変なことになるリスク──これを「テールリスク」と呼ぶ。あるいはそうしたリスクの重要性を指摘したナシーム・ニコラス・タレブの世界的ベストセラー『ブラック・スワン』 にちなんで「ブラックスワン・リスク」と呼ぶ。
リーマンショックがテールリスクの典型的な例だ。リーマンショックの前から大きなリスクが存在することを指摘していた専門家はいた。しかし、市場全体がそのリスクは非常に小さいと見ていた。だから、リスクがあったにもかかわらず、株価も不動産価格も上昇を続けた。しかし、リーマンショックが起きてしまうと、大変な混乱に金融市場は陥ったのだ。
たとえ日本国債の価格暴落の確率が小さいとしても、もしそれが起きたらそれに対応する手段はあまりない。日本銀行が大量に国債を購入すればよいという議論があるが、いったん暴落してしまえば中央銀行が大量購入したからといって抑えきれるものではない。それどころか、そうしたかたちで金融政策が使われれば、中央銀行の信頼が失われ、市場はますます混乱することになる。