毎年、9月21日は「世界アルツハイマーデー」である。アルツハイマー病や認知症は、高齢者の疾患という認識が強いが、近年、65歳未満で発症する「若年性認知症」が注目されている。2009年の厚生労働省調査によれば、国内の若年性認知症患者数は約3万8000人、推定発症年齢平均は、51歳前後だった。
老齢期の認知症と異なり、若年性認知症に関する一般の認識は低く、ケアもまだまだ不十分である。これは世界各国共通の課題で、発症リスクや予防策を探るさまざまな取り組みが行われている。
先月、「JAMA内科学」にスウェーデンからの衝撃的な報告が掲載された。若年性認知症の発症リスクはすでに10代から蓄積されているらしい、というのだ。同研究は1969~72年に徴兵された(平均年齢18歳)約49万人の男性を対象に行われてきたもの。これまで若年性認知症は遺伝性の疾患と思われてきたが、今回の研究で遺伝子変異以外の発症リスクが判明した。
対象者のうち、若年性認知症を発症したのは487人で、発症年齢の中央値は54歳だった。これらの人々に共通のリスク因子を抽出すると、アルコール依存症(危険率4.82)、脳卒中歴(危険率2.96)、抗精神薬の服用(危険率2.75)、うつ病(危険率1.89)などが強く関連した。このほか徴兵当時、つまり18歳以降の薬物依存症や低認知機能、低身長、高血圧もリスク因子だった。リスク因子を2つ以上持ち、なおかつ認知機能が低かった場合は、若年性認知症の発症率が20倍にも膨れ上がっている。研究者は「リスク因子のほとんどは青年時代に端を発しているが、修正できるものも多い。早いうちから予防すること」を勧めている。
右のリスク因子は加齢性の認知症にも当てはまる。アルコール依存や脳卒中の既往、うつ症状、高血圧が典型だ。これに肥満や高血糖が加われば発症率は上昇する。
もし10代のころから引きずっているリスク因子があるなら、すぐに修正を心がけよう。修正できない「加齢」という最大のリスク因子を増長させる必要はない。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)