筆者が実際に使っていた帽子と部隊章。「WAiR」はWestern Army Infantry Regimentの略。部隊章には「バラモン凧」が描かれている。バラモンとは五島の方言で「元気がよい」という意味。
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 私は、西普連の二期生、つまり入隊・配属から西普連に所属する生え抜きの隊員だった。仮に、今でも自衛隊に籍を置いていたならば、現在はこの部隊の中心となるメンバーの一人として、名を連ねていたかもしれない。配属当時は、新設されたとはいえまだすべての装備などが潤沢に揃っておらず、部隊の文化もこれから作り上げようと動き出しており、部隊としての骨格をなそうとしていた時期であった。

 部隊の文化としては、どこかベンチャー気質に似たようなものがあったと感じている。例えば、部隊の装備や設備も、自身がより良いものだと感じたものは、積極的に上司に提言していた。具体的にはブッシュハットと呼ばれる、南西諸島独特のうだるような暑さをしのぐための防暑帽や、履きやすさ歩きやすさにこだわった新型のブーツ、従来の水筒よりも容量が確保できるキャメルバック型の水筒が正式に武器として採用されるなどの例がある。

 他にも、現場の隊員を活動しやすくするための道具や訓練内容などを思いついたならば、すぐさま上司に提案し、仮説検証を通じて正式採用されるケースも少なくない。これもすべて、自分たちの現場としての行動を容易にすることこそが、任務遂行に必要なものであると現場として実感する、現場主義を貫く部隊だからだ。

死の淵ギリギリの生存自活訓練
それでも金銭面は特別扱いなし

 西普連は、その成り立ちと特殊な任務を完遂する日本でも数少ないレンジャー部隊であるため、一般的な部隊とは違った訓練を実施している。

 レンジャーとは遊撃活動を主にし、偵察や奇襲など、隊員一人でも任務完遂を行えるだけの訓練と知識、体力や判断力が必要とされる。特殊な訓練を積んだ者のみがレンジャーと名乗れる、一種の肩書のようなものだ。西普連はそうしたレンジャー資格を持った隊員が半数以上を占める。

 離島防衛では、ヘリや船からの上陸作戦を中心に短期間のうちに一気に攻め上げ、そして一瞬で戦場から離脱することが求められる。そうした任務を完遂できる知識と技能、体力、知力を身につけるための訓練は、過酷の一言だ。日々の訓練内容自体が、まさに生死を分かつものでもある。

 例えば山地機動訓練は、ほぼ毎月のように演習場を中心に行なわれる訓練で、40~50キロ近い装備を背負い、山々を分け入り、三日間ほぼ不眠不休で歩き続け、気付かれずに敵のいる場所に侵入することを想定している。意識を朦朧とさせながらも、西普連隊員としての意志と責任をもとに、歩を進めていく。

 また、離島へ侵入するためには空もしくは海からの侵入経路を確保しなければならない。そこで、命綱なしに即座にヘリからロープで飛び降りる降下訓練やゴムボートを利用した上陸訓練、上陸に必要な水路潜入に備えて、2~3時間もの遠泳訓練も行なう。