料金値上げは消費者や
事業者にとって大きな負担

 関西電力は、政府の認可を受けて、2013年5月に家庭向けを平均9.75%、企業向けを平均17.26%、電気料金の値上げをした。

 大飯原子力発電所など関電の原発の稼働率が著しく低下したことによって、原発代替としての火力発電向けに巨額な追加燃料費が発生したことが原因である。それは主として、LNG(液化天然ガス)輸入の急増によるものだ。

 値上げ以前の料金の原価構成では火力発電向け燃料費は年間4685億円(08年ベース)であったが、値上げ以後の料金の原価構成では火力発電向け燃料費は年間9023億円(13~15年度平均)となる。

 関電としては、人件費や修繕費の削減など経営合理化策を講じたが、料金を構成する総原価に占める火力発電向け燃料費の割合が、34%と最大かつ突出していることもあって、経営合理化策だけではとても吸収し切れない。そのため、政府への値上げ申請に踏み切ったわけだ。

 料金の値上げは、消費者の社会生活や事業者の経済活動に大きな負担を強いることになる。今や電気は、経済社会において必需財だ。よほどの事情がない限り、料金の値上げは許されるものではない。

事故を起こしていない原発停止は
世界標準からしても異常事態だ

 戦後日本の電気事業の歴史を見ると、1973年の第一次石油危機以降、電気料金は概ね漸減傾向で推移してきた。1996年に導入された燃料費調整制度(LNGや石炭など化石燃料の輸入価格の変動を電気料金に反映させる仕組み)による料金変動はあるが、本格的な値上げのための料金改定は、震災後の原発停止によるものが初めてである。

 東日本大震災における東京電力福島第一原発の事故後、事故を起こした同1~4号機が事故の処理や廃炉への対応のために、事故後は再稼働させないのは当然のことだ。

 しかし、事故を起こしていない他の原発まで再稼働を許さないのは、事故対応としても、世界標準からしても、異常事態だ。電力需要家も電力会社も、その煽りをもろに食らっている。原発を保有する電力会社においては、原発の稼働・停止に係る帰趨は、経営動向のみならず、自社管内の需要家の負担動向を大きく左右する。