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2030年のビジネスモデル

フィリピンの貧困街に100のビジネスを立ち上げる

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第13回】 2013年11月28日
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 「ワクワークセンター」と命名するこのキャンパスには、英語教師になりたい人、美容師を目指す人、ITを勉強したい人など、様々な就業を目指す現地の人々が集まる。2014年3月には最初の一棟が完成予定だ。

 「このキャンパスは、寮も付いているので、セブ島以外の島からも、大学に通いたいけれど通うことのできないモチベーションの高い貧困層の若者たちが来ることができる。そして、その子たちは、自分の島に帰り、センターで得たスキルを使って、コミュニティのために何かを還元することができる」と山田さんは目を輝かせる。

社会的志を持った国際的民間ビジネス

 フィリピンの貧困街に乗り込み、そこにある社会問題の構造を見抜き、人助けとビジネスとを掛け合わせたハイブリッドモデルを自ら考案し、さらには日本の大企業から数千万円もの資金を引き出してキャンパスを建設しようとしているこの女性起業家は、なんとまだ28歳である。

 山田さんは大学4年生のときフィリピンを訪ね、路上の子供たちとボールで一緒に遊び、スポーツを通じた楽しさを教えようとしたそうだ。子供たちは笑顔で楽しんでくれた。

 ところが、その子の母親に「あなたと一日遊んでいたせいで、子供が働くことができず、私たちは今日食べるご飯がないんだよ」と言われる。この時、自分がやっていることはただの自己満足なのだと山田さんは開眼した。「この子達を本当に助けたいなら、単に遊んであげるとか、食べ物をあげるとか、お金をあげるとかでなく、彼らと一緒になって良質の働く機会を作らねばならない」

 今、ワクワークのプログラムから巣立っていった学生のなかには、フィリピンで大人気のコールセンターに就職した人もいる。ジュニア向け英語講師としての努力と実績が高く評価されたのだ。こうした卒業生たちが、子供たちの憧れとなって、同じような成功を生みはじめると嬉しい、と山田さんは語る。

 国際支援機関や行政機関だけではない、また寄付を主体としたNPOでもない、社会的な志を抱く起業家による国際的民間ビジネス。日本の未来に必要とされるビジネスモデルがまた一つ生まれようとしている。

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齊藤義明
[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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