

そして英語の授業。単語のドリル教材をiPadで取り組んだりしていた。また1年生は「持ち帰り学習」といってiPadを家庭に持ち帰って勉強する。この際インターネット環境が家庭になくても学べるように、先生があらかじめネイティブの英語教員の会話をビデオで録画し、これをPodcastの形式で学校でダウンロードさせていた。ネイティブの教員は2週間に1度しか学校におらず、よい発音を聞けるようにと、教材作りもiPadで行っていた。
このように、iPadの授業内での使い方は教科や先生によってまちまちだった。
また、全てをiPadで行うのではなく、iPad使う時間と先生の話を聞く時間のメリハリが非常にきっちりと付いていたことも印象的だ。冒頭に紹介したように、iPadを裏返しておく時間に話を聞き、各自がiPadを使って作業をする時間があり、そしてグループで1台のiPadを囲んで議論をして発表を行う時間がある。
iPadの存在を先生も生徒も意識しながらも、あくまで教材の1つとしてよいブレンドが行われていたことが、非常に自然な教室の風景を作り出していた。
松阪市立三雲中学校の校長を務める川田公也氏は、導入当初の1年目に「むなしさが残る、くやしい体験」をしたと振り返る。毎年報告会を兼ねた公開授業を行うが、初年度は思うような成果を上げることができなかったそうだ。いったい、何が起きていたのだろうか。
三雲中学校でiPad教育を推進しているのが研究主任の楠本誠氏だ。
「当初、現場の先生方は、誰もiPadに触れていませんでした。あるいは、授業で使うのを嫌がる先生もいたほどです。公立高校では普段、夕方6時まで部活の顧問をやっていて、そこから翌日の準備をするのに、いつ新しいデジタルデバイスに触れというのか、という指摘です。スタート地点はそこでした。また、初年度ということもあり、何が何でもiPadを授業で使わなければ、という気負いもありました」(楠本氏)
確かに、iPadがあるからよい授業ができるわけではなく、チョーク1本で効果的に教える先生もたくさんいる。そこで、生徒の活動に絞り、iPadでしかできないことに絞って活用して行く方針を採りはじめた。またデジタルデバイスに抵抗感のない若手の先生を中心に、教員室の中で、iPadを使った教授法について相談をしたという。