もともと、「飲むこと」が大好きな池田さん。その日も、日々の疲れを癒すべく、居酒屋で飲んでいた。そこで、たまたま出会ったのがサバ好きの男子たち。サバを通じて意気投合したメンバーは時折、「鯖ナイト」と称してゆるい飲み会を繰り返していた。

 そうして2、3年が経過したある日のこと。メンバーの一人が「せっかくこうしてみなで集まっているんだから、会に名前でもつけようじゃないか」と言い出した。「いいね、じゃあ、『全さば連』はどう?」と声が挙る。「おー、いいね、いいね」と賛同するメンバーたち。「よし、じゃあ、正式名称は『全日本さば連合会』で行こう」と話はトントン拍子に盛り上がり、さらに拡大してメンバーを呼び込むべく、公式サイトfecebookページが作られた。2013年3月8日のことである。

 と、そこへ、某有名雑誌の取材が入った。

「全日本さば連合会」の会長は、自称サバニストの小林崇亮氏と決まっていた。「となると、女性は何と呼ぶのでしょうか?」。記者に質問され、広報担当の池田さんが考える。とっさに思いついたのが、あの「サバジェンヌ」である。

「おもしろーい、それ、いいですね」

 たちまちのうちに盛り上がり、全日本さば連合会の会長は「サバニスト」、広報担当は「サバジェンヌ」、ということになった。

「要するに、すべては単なる思いつきということに……」

「ま、そういうことなんです」

 侮る事なかれ、思いつきは発明の母と言う(誰が言ったか知らないけれど)。ビジネスは常に、思いついて人より早く実行した者が勝ち、である。

「それにしても、サバは何やら語呂がいいですね。“サンマニスト”や“アジジェンヌ”ではサマにならないけれど、サバニストとサバジェンヌなら、パリジャンみたいにおしゃれな響きになります。これはいったい、どういうことなのでしょうか?」

 これには、取材に同行してくれた編集者ともども3人で考え込んでしまった。

「ひょっとして、母音で終わるから?」

「音が開放的ですよね。SABAって叫ぶと口が開く。それで、心も開放的になるんじゃない?」

「出だしのSAっていう音もいいんだと思います。なんかこう、勢いを感じるじゃないですか」

「そうね、フランス語では『Cava?(サヴァ?)=お元気?』と挨拶するくらいだし」

 根拠も脈絡もないのだが、それでも会話が弾むのはサバの効用としか言いようがない。