時の流れが加速している。世の移ろいも速くなった。人気商品も、ヒットソングも、リーディングカンパニーも、めまぐるしく変わる昨今である。そんな中、近年稀な安定感を感じさせた安倍政権も2014年は波乱に揉まれるだろう。経済(医学)用語でいう「プラシーボ効果」が綻びる。プラシーボとは偽薬つまり「ニセ薬」のこと。皆がクスリと信じていた時は効くが、やがて薬効は消える。経済政策の詐術は長続きすることはない。きっかけはさしずめ消費税増税。アベノミクスの化けの皮が剥がれる年になりそうだ。
銀行に注がれた資金はブタ積みのまま
2013年末、日銀の資金供給量は200兆円を突破した。アベノミクスの第一の矢「異次元の金融緩和」を数字で表したものだ。市場に流し込むおカネの量(マネタリーベース)は札束で積み上げれば上空2000キロに達する市場空前の規模になった。
アベノミクスが始まる前、2013年3月末は146兆円だった。黒田東彦日銀総裁になって54兆円が積み増しされた勘定だ。
マネーは経済の血液と言われる。大量に輸血すれば元気になる、ということだが、人の体も一国の経済もそんな単純ではない。日銀統計を調べると銀行融資は470兆円台で微増という状態。どう見ても怒涛のマネーが貸出に向かっているとは言えない。
約50,000,000,000,000円もの黒田マネーはどこに行った。アベノミクスでは中央銀行が銀行に大量にマネーを供給することで資金を必要としている企業への融資が増え、経済活動が活発になる、ということだった。
「銀行に注がれた資金はブタ積みです」と日銀関係者はいう。ブタ積みとは業界用語で、日銀に設けられた銀行口座に溜まっている、という意味だ。
日銀は銀行の銀行である。一個人である我々が口座を持つことはできない。日銀との取引は銀行など金融機関だけに許されている。この口座にカネを流したり吸いとったりして、日銀は金融調節を日々行なっている。カネが注入されれば銀行は金利をつけて貸出し、利ザヤを抜く。それが銀行の商売だ。日銀が供給するベースマネーは銀行の飯のタネである。