商談の早めに、「ノー」と言わせる
続く質問で、買わない理由を聞けばよい
たとえ、どちらにしても、「ノー」を通じて、販売にまとめる一つの論拠にする人物こそ、セールスマンである。下記は、レターマンが忘れがたい教訓として引用したものである。
「どの商談に際しても、なるべく早く相手に『ノー』といわせるように仕向けている。程度の差はあろうが、だれでも『ノー』といいたい気持ち、反対したい気分を持っているものだ。これは吐き出させねばならない。したがって、商談の初めにあえて『ノー』といわせるようなたずね方をする。そして相手がひとたび『ノー』といったら、即座に『なぜでしょうか』という営業上非常に重大な意義のある言葉を使って対応する。一度『ノー』といった人は、こうして応対しているうちに、なぜ買わないかという理由を話しだすものだ」(106Pより抜粋)
本書では、「『イエス』という返事は、ボトルの中にあるワインである。『ノー』という返事はボトルの栓である。ボトルの栓を抜かないかぎり、中身のうまい酒は味わえない」と表現もされているが、断られることは大事な通過点なのだ。
ここでもまた、前回に続き、レターマン4つのスローガン―レターグラム―を紹介したい(119Pより抜粋)。レターマンの営業指針である。
- 口実のための口実はない、口実には必ず理由があるはずだ。
- 「ノー」に対しては、反対すべき理由はない。それにはただ納得のいく回答があるのみだ。
- 「ノー」のように見せかけた口実ほど、気にくわぬものはない。
- あらゆる「ノー」に打ち勝つことを、われわれの目的としよう!
もちろん、「ノー」には、撤回困難なものもある。こういう疑問の余地がない「ノー」を聞いたのに、なお売り込もうとしても、それは時間の無駄に終わるだけである。提供するものの特徴を十分見込客に説明し、見込客側でもそのすべてをのみ込んでいながら、買おうとしない場合は、その営業の仕事を、たとえ一時的にせよ、打ちきる時だと私は思っている。
しかし、あえて「営業は断られた時に始まる」というのは、最初の「ノー」、2番目、3番目の「ノー」は、いずれも、これをたやすく、さらに詳しい説明を聞きたいという気持ちに変えさせてしまえるからである。最初「ノー」といった顧客を最後に「イエス」といわせるのは、口説いて承諾させるという意味ではない。