「ノー」という言葉は、商品について
いろいろとたずねたい要求である

 最後に、「ノー」と言われて発奮した人の成功例(173Pより抜粋)を紹介して終わりにしたい。

 「これは私がまだ19歳ぐらいのころの話で、初めて私が注文取りの出張旅行に出かけた時のことである。当時、われわれの店は紳士服用の木綿の裏地を専門に扱っていた。

 この初めての出張の2日目に、バージニア州ロアノークに着いたが、そこから数マイル離れたセーラムという小さな町に下着製造業者があった。無駄足を踏んではと考えて、私はロアノークから先方に電話をかけた。電話口へ出たこの店の主人は、丁寧な口調で接してくれたが、要は、商品は全部間にあっているから仕入れを必要とする商品は一つもないこと、したがって、わざわざ足を運ばれてもただ時間の無駄に終わるから、次回この地方へ出張の際に改めて出なおしてほしいという。

 こう一応筋の通った話をされると、なんと答えてよいものか、いささか当惑しないわけにはいかなかった。だが、私としては、ままでに1度もお目にかかる機会を得ていないので、お見知りおきを願い、ただわが社の扱う商品について説明する機会を与えていただくだけで十分である旨を述べた。するとその主人は、どうしても来たいというなら、会っても差し支えないという返事であった。

 会ってみると、この主人はかなり年輩だったがなかなか親切そうな人だった。まず面会を許してもらった礼を述べ、将来の参考までに商品の説明をごく簡単に申し上げたい旨を申し入れた。

 こうして商品内容について説明中、むろん、私はとくに価値があると考えたわが社の特別製品については納得のいく説明をすることは忘れなかった。小一時間もなごやかに話を交え、ひと通り説明も終わったので、私はサンプルをカバンにしまい、再び見本を見てもらった礼を述べ、次回この方面に出張の際は、お言葉どおり必ずおじゃまするつもりである旨を伝えて暇を告げようとした。