すると、その主人は優秀な特別製品だといって見せた品について2、3質問をしたあげく、『では、試験的にその品を少しもらうことにしよう』といってくれたのである。この『少しもらう』と彼がいった数量は、私がびっくりするほど、当時としては、相当まとまった注文だった」
前置きの「ノー」という言葉は、一応どの顧客からも聞かされるものと覚悟しておかねばならない。この言葉は、もっと詳しく説明してもらいたいという、一種の「意思表示」だと考えねばならない。これは商品について、いろいろたずねたいという一種の「要求」でもある。
もし買い手側でとくに質問したいと思う場合は、たとえば「これはよその品と比べて値が張るようだが……」「この機械はかなりうるさい音を立てるようだが……」あるいは「このプラスチックの部分は、こわれやすいのではないか……」といった質問があるはずである。
しかし、買い手があまり納得していない場合、まだ懐疑的でなお説明を聞きたいと考えていない場合には、とかく決定的と考えてはならない「ノー」という言葉を使うものである。「いや、あまり必要ないのですが……」というような返事は、その裏を返すと、「その商品の特長を、もっと詳しく説明してほしい」というのと同じである。
営業の仕事は、「ノー」という言葉が象徴する逆境に直面した時に、人格とねばり強さとをとくに必要とする職業である。したがって、多くの優秀な人物が営業の仕事を選んで、この道に携わり、実際のビジネスを学んで、将来を築きあげつつある理由がそこにある。
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E・G・レターマン(著) 松永芳久(訳)/
本体1400円+税/ダイヤモンド社
60年以上読み継がれている、
営業職に就いたら最初に読むべき
伝説のバイブル、ここに再誕!!
営業にとって、耳が痛い断り文句。「価格が高い」「あまり必要ない」「うちにはありますから」など、多くの人が言われ、歯がゆい思いで商談の場を去っていったことでしょう。しかし、著者は、その言葉にこそ顧客のニーズが潜んでいるといいます。断られてから、どのように商談を進めればいいのか、この本には実例に基づいたノウハウが詰まっています。
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