これに対して、上記(a)のように、わが国も、欧州各国や主要なアングロ・サクソン諸国のように、独立した機関に財政運営上の中期見通しを策定させることにすれば、おそらくこのようにバイアスのかかった見通しが示されることはなくなろう。ひいてはそれが国全体としての「財政制約」の正確な認識や、健全な財政運営につながっていくものと期待される。

「国のかたち」の刷新
―もう一つの選択肢

 以上のように、現行の行財政制度が継続することを前提としても、実際の財政政策を運営していくうえでの基盤となる①「財政制約」の認識、②予算編成のルール、③個々の政策の有効性を吟味する制度的枠組み、④独立財政機関の設置、といった工夫ができれば、今後の政策運営は、財政再建の確実な達成に向けて、大きく舵を切っていくことができるかもしれない。

 しかしながら、わが国にとって最大の問題は、これらの改革はいずれも「政治」の世界が現在の財政運営上の問題を正面から認識し、必要な法律の制定・改正等を国会で行わない限り、もしくは少なくとも政治的な合意を形成できない限り、実行に移されることはあり得ない、ということだ。仮に今後も、「政治」がわが国の財政が抱える危機的な状況を正面から受け止めようとせず、有効な手を打たずに月日が経過するようなことになると、いずれ、財政運営が行き詰まる公算が大きい。その際には、機能不全となった現行の中央集権的な行財政制度を大幅に刷新する大改革に踏み切らざるを得なくなるかもしれない。

 わが国の現在の国と地方の財政制度には、①国と地方の役割分担や責任分担があいまいである、②異なる分野の政策の間での「国における画一的な優先順位」が地方においても優越する、③地方がその財政運営に際して、国に依存し、自助努力を怠りがちである、④地方公共団体間で税収が偏在し(事実上、東京の「独り勝ち」状態)、財政力に大きな格差が自動的に生じる状態が放置されている、といった問題点がある。

 こうした諸点を抜本的に改めるべく、次のように「国のかたちの刷新」を断行することも、財政再建を確実に達成するうえでの一つの選択肢となり得よう。国(中央政府)の役割は必要不可欠な一部の分野(外交、通貨・金融、生存権の保障にかかわる社会保障など)に限定し、それ以外の国による「企画・立案」の大部分(上記の部分を除く社会保障や公共事業、教育等)は、大きな地方政府(州政府)に移し、その役割分担に見合う形で、現在の国の歳入(税源)の一定部分を州政府に再配分する。地方交付税制度は廃止し、代わりに州政府間での財政力格差を水平的に調整するという、税収の一定部分について公平化を図る再配分メカニズムを設ける。