古賀作品の音域は広く、1オクターブ半からときには2オクターブに及ぶ。跳躍も多い。藤山一郎はこう語っている。

「(略)マンドリンなどのプレクトラム族は、楽器を見ながら指を飛ばして演奏できるという特質を持っています。だから、作曲に当たっても、ギターを弾き、その指を見ながら曲を書いていける、ということが可能となります。いわば、音を手でさわりながら見ているわけです。さらにいえば、視覚で曲を作れる、ということになりましょうか。そこに意表をつく曲の展開も出て来るというわけです」(藤山一郎「デッサンの確かな作品群」『古賀政男――昭和の日本のこころ』所収、平凡出版、1978)

 ギターを弾きながら作曲するのならば、後年のシンガーソング・ライターと同じではないか、と言われそうだが、フォークソングなどは旋律を弾きながら作曲するのではなく、和音(コード)鳴らしながら横へ流れていく旋律を作る。古賀政男はコードではなく、旋律を目で縦に見ながら作曲したのではないか、というのである。

★参考文献★

比留間賢八『マンドリン教科書:独習用』(共益商社書店、1903)
比留間賢八『マンドリン独習』(共益商社書店、1910)
『日蓄(コロムビア)三十年史』(日本蓄音器商会、1940)
コロムビア五十年史編集委員会編『コロムビア五十年史』(日本コロムビア、1961)
日本ビクター50年史編集委員会編『日本ビクター50年史』(日本ビクター、1977)
『古賀政男――昭和の日本のこころ』(平凡出版、1978)
高橋功『評伝・古賀政男』(全音楽譜出版社、1984)
古賀政男「「私の履歴書」(『私の履歴書――文化人12』所収、日本経済新聞社、1984)
飯島國男『比留間賢八の生涯――明治西洋音楽揺籃時代の隠れたる先駆者』(全音楽譜出版社、1989)
倉田喜弘『日本レコード文化史』(東京書籍、1992)
藤山一郎『藤山一郎自伝――歌声よひびけ南の空へ』(光人社NF文庫、1993)
下嶋哲朗『謎の森に住む古賀政男』(講談社、1998)
團伊玖磨『私の日本音楽史』(NHKライブラリー、1999)
古賀政男『自伝わが心の歌』(新装増補、展望社、2001)
藍川由美『「演歌」のススメ』(文春新書、2002)
菊池清麿『評伝・古賀政男』(アテネ書房、2004)
佐高信『酒は涙か溜息か――古賀政男の人生とメロディ』(角川文庫、2008)
和田登『唄の旅人 中山晋平』(岩波書店、2010)
竹内貴久雄『ギターと出会った日本人たち――近代日本の西洋音楽受容史』(ヤマハミュージックメディア、2011)

(つづく、隔週金曜公開、次回は4月4日)