遺族たちは昨年末、自分たちの日和幼稚園のケースが関係各所にどのように記録されているのかを調べるため、文書の情報開示請求を行った。今年開示された文書からわかったのは、県がかなり早い段階から、園に対して事細かに助言を行なっていた事実だった。

 発災から1ヵ月も経たない4月上旬。県は、園の関係者を県庁に呼び出して概要を説明させたり、事実関係を時系列で把握しておくよう、電話で指南したりしている。遺族対応についても、「丁寧に」と書いてある。

 翌週の4月15日には、県は「事故報告(事実関係部分)の作成について」という至れり尽くせりの手引き書を作成し、園側にFAXしている。

 翌5月には、同園の消防計画を入手して、文科省に提出。ただしこれは、幼稚園が遺族に説明会で配布した紙一枚の避難マニュアルとは全く別物だ。

 同月、県はまた幼稚園を訪れて教職員らと打ち合わせをしている。

 園側も、6月に県庁を訪れ、遺族側の代理人から届けられた、謝罪と損害賠償の協議を求める文書に対する回答について、提出前に報告・相談をしている。

 開示文書は多くの部分が黒塗りされているため、内容の詳細はわからないが、当時、県と園との間で、活発なやり取りが続けられていた様子がわかる。県の現在の担当者は、文書に遺された指示等のやりとりを「それが“指導”といえるレベルのものかは、判断が分かれる」とする。

 県は、権限がないからと何もしなかったのではなく、実際には可能な範囲で、園側からは多くの情報を引き出していた。

 ただ、それを、遺族と共有しなかった。遺族から正式に事情を聴取することもなかった。

 私立の学校や幼稚園・保育園で起きた災害や事件・事故から教訓を得たり、再発防止を図るためには、起きた出来事やその後の対応についての情報が、公的あるいはそれに近い機関に、総括的に集められている必要がある。

 そうした情報はどこに集められているのか。文科省に問い合わせてみたが、一般的にそうした統計は省内にはないという。各自治体にそれぞれ報告が上がっているだけだ。

 宮城県の私学文書課に聞くと、事故報告書の提出はさせるが、統計を取ったり、報告から教訓を導き出すようなプロセスも「現状では特段ない」という。

 文科省の外郭団体で、学校管理下における災害共済給付を行っている日本スポーツ振興センターには、災害や事故の情報が集まりやすいが、あるのはあくまでも申請分の情報だけである。

 筆者の調べたところ、私学の学校管理下の災害や事件・事故を、全国的に網羅している団体は、どこにも見当たらない。