東横線で隣駅の渋谷から3分。トンネルを抜けた谷間に埋まりこみそうに小さなホームを中・高層の住宅が見下ろしている。代官山の街は、渋谷に最も近く、そしてはるかに洗練された雰囲気をもつ住宅街である。と同時に、ブティック、レストランの街でもある。きわめて都会的・先進的な高級住宅街の形がここにつくられている。

若者の街でもある高級住宅地

代官山 代官山を住む場所としてはとらえない人々にとっても、この街の魅力は否定できないだろう。流行の先端をいくブティック、注目のレストラン、カフェ、そしてそれらを目指してやってくる、流行に敏感な人々…。代官山は青山、自由ヶ丘、広尾、麻布といった街と共通する、ある種のファッショナブルなイメージを確立させている。

 そしてこの街は、きわめて都会的な業種のオフィスが集中しているところでもある。デザイン事務所、コピーライター、芸能プロダクションなど、マスコミ・メディアに関わる仕事やクリエイティブ系など、カタカナで表現したほうが判りやすい業態である。これらに従事するスペシャリストたちも、代官山のイメージを作り上げるのに一役買っている。代官山は、情報に嗅覚が鋭い人間たちのアンテナタウンなのである。

 こうした代官山の今日的なイメージに、昔からの住宅の姿を重ねあわせていくと、住む場所としての価値が判然としてくる。昔からの代官山を知っている人間にとっては、南平台、鉢山町、青葉台とつづくお屋敷町に連なる場所である。しかもこの町は同潤会アパート、東急アパートメントなど、時代を代表する集合住宅が誕生し、変遷して来た、マンション住まいのショーケース的な存在でもあるのだ。この町を見続けると、日本人の都会のライフスタイルがどのように変化したかを記録する、最高の定点観測ができるだろう。