解釈主義と実証主義は対立する考え方

「解釈主義」と「実証主義」は、互いに対立する思想です。

 社会科学における解釈主義に基づけば、社会科学の研究対象は自然科学の研究対象とは異なる調査手法が必要である、との立場を取ります。そして、社会事象を分析するのであれば、それに関わる人々自身がその事象を解釈しているように、研究者もその事象を解釈することを重視します。

 同じように、社会科学における実証主義に基づけば、社会科学の対象も、自然科学と同様に、実験や統計調査によって客観的な事実として捉えることができるとします。したがって、観察者が異なっても同様の解釈が行えるよう、厳密な方法論を用いて、客観的な解釈を試みることを重視するのです。

 解釈主義と実証主義、どちらの立場に立つべきなのか、とくに社会学や哲学の領域では長年の論争が続いています。そのため、どちらが上で、どちらが下であるということは言い切ることはできません。さらに、日本においても、欧米においても、双方の立ち位置が経営学の発展に寄与し得るとの考え方が広まってきているのも事実なのです。

 わかりやすい例は、解釈主義的な立ち位置を取る研究者は比較的に定性的研究を重視し、実証主義的立場に立つ研究者は、比較的に定量的研究を重視してきたという傾向です。しかし、その両者も、次第に逆のアプローチの価値を認め始めているのです。

 実証主義的な考え方を主流として、定量研究を中心に発展が進んできた欧米の経営学が、逆に定性的研究手法の真価を問い直しています。反対に、解釈主義的な立ち位置を評価し、事例研究を中心に積み上げてきた日本の経営学も、定量的手法に新たな価値を見出しているのが現状なのではないでしょうか。

 もしかしたら、両者の中間的な位置にある、定性と定量の「mixed method(混合法)」が1つの時代を築き上げようとしているのかもしれません。

 定性的な手法において仮説を導き出し、それを定量的な調査で検証する。このように両者の強みを結び合わせた研究は、これからさらに評価されると私は考えています。