それぞれの違いを乗り越えて理解を深めるために
批判を恐れずに単純化すれば、日本は比較的実践を重視し、解釈主義的な立ち位置の調査を重視してきたように思います。逆に欧米は、比較的研究を重視し、実証主義的な立ち位置の調査を重視してきたように考えています。
両者の間に違いはあれども、優劣はなく、日本独自の学問体系を築き上げてきた事実には畏敬の念を禁じえません。
そもそも、この単純化した両者の比較は、次第に意味をなくそうとしているのではないでしょうか。両者が互いの強みを意識し、その中間地点に至ることで、より良い成果につなげることができるとも私は考えています。
ただし、そのためには、より力強く日本発の経営学を発信しなければならないと感じます。それは、欧米の研究者が理解できる形で、また説得される形でなければなりません。
両者に違いがある以上、その違いを乗り越えて理解を進めていくためには、必要な労力が存在するのも事実なのです。
さて、今回はあえて単純化して、1つの見方を説明しました。もちろん、多様な広がりを持つ経営学の研究体系の現在を考えれば、この記事とは異なる見方も多数存在するかと思います。
しかし、意見をぶつけ合い、ときには対立し、そこから新たな理解を生み出していくことが、社会科学の本質の1つであると私は考えています。
お叱り、ご指摘、ご意見、ご感想、お待ちしております。
ではまた。
定性研究、ケース・メソッドのような事例研究は、再現性のある社会科学だと言えるのだろうか?第10回では、今回のテーマにより深く踏み込み、定性研究の意義を解き明かす。次回更新は、3月24日(月)を予定。
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