薬害肝炎救済法案が今週中に成立する。
「全員一律救済によってこの肝炎問題の全面解決を図りたいとの切なる思いに応えるためには司法と行政の枠組みを超えた立法措置による解決しかない」
福田首相が、原告団代表と首相官邸で面会した際に、こう語って「政治決断」を伝えたのが12月25日のこと。直後、自民党内にプロジェクトチームを設置し、救済法案の策定作業を指示した。
それからわずか2週間での法制化は、「政治」が本気になって取り組めば、事態は必ず展開するのだということを認識させた。
だが、それならば、なぜもっと早く決断しなかったのか。ここで抱かざるを得ない疑問はその一点に尽きる。
過去の国家賠償被告すべてに
「厚生省」が含まれていた
日本政府は、これまでにも繰り返しこの種の「政治決断」を遅らせることによって、問題の解決を先延ばしにしてきた。その結果、国民の中に、多くの「被害者」を作り、取り返しのつかない状況を作ってしまったのだ。
薬害エイズ訴訟、ハンセン病集団訴訟、ドミニカ移民訴訟、中国残留孤児訴訟……。
こうした国家賠償請求の歴史にはある共通点がある。それは、「被告」にはすべて「厚生省」(現・厚生労働省)が含まれているという点だ。どの問題でも、該当した厚生省の役人は自らの関与を否定し、国家公務員法の厚い壁に守られて、決して罪を認めようとしなかった。今回の薬害肝炎の問題でも同様だ。
思えば、年金記録紛失問題や靖国神社問題などでもそうだった。同じように「厚生省」の管轄であるが、その不作為と怠慢が、現在の歪んだ事態を生み出したといってもいい。